名もなきお伽話 文

□dance party
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―がやがやがや…―


「…わぁ……!」


お城の中にあるダンスホールには

沢山の人で溢れかえっていた。


「凄い人の量…!」

「…アリス、言っておくけど

 国の公式行事には

 この何倍もの人が来るのよ。」


そう言うのは私の隣に居るアカネ。

髪をきっちりと結わえ、

綺麗な髪飾りをつけ

豪華なドレスを着たアカネは

いつものアカネとは違う雰囲気がした。


「えぇ!?

 もっと多くの人が来るの!?」

「そうよ、

 だから今の内に慣れておきなさい。」


そう言ってアカネはフッと笑った。










このダンスパーティーには

様々な国の著名人・有力貴族が盛大に集まってきている。

ある者は他の国の権力者に媚を売る為、

ある者は純粋にこの国の新たな王族の一員を見る為に、

目的は色々だけれども

私が主役のこのパーティーに沢山の人がやって来る。


(…あーもう緊張するよ………!)


私はギュっと目を瞑った。


「…アリス?」


アカネがそんな私の顔を覗き込む。


「…心臓がドキドキする……。」


私は心臓の上辺りをソッと触る。


「緊張するよ……!」


そう言って私は切なそうにアカネの方を見た。


「…大丈夫よ、

 こんなもの慣れればどうって事はないわ。

 それに、」


アカネはニコリと笑ってみせた。


「もし貴方がへまをしたとしても

 私達王族皆でそれをフォローするつもりよ。

 だから安心して踊ってきなさい。」


その言葉は力強く、

私の胸に大きく響き、

私はなんだか身体中に入れていた力が

スッと抜けて行く様だった。


「…分かった、

 安心して行ってくるね!」

「えぇ、安心して行ってらっしゃい。

 それにパートナーは貴方のダンスの面倒を見た

 あの黒龍よ?

 踊っている最中にもし何かあっとしても

 きっと黒龍がなんとかしてくれるわ!」


アカネは悪戯にクスリと笑った。


「あ?

 オレがなんとかするだと?」

「「…え!?」」


ギョっとする私達。

真後ろにはいつの間にか

タキシードを着こなした黒龍が居たのだった。



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