名もなきお伽話 文

□迷路
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―少し時はさかのぼり、―


「…なんだよ、アリスの奴

 ちゃんと言えるじゃねぇか。」

「そうね、

 素晴らしい演説だったわ。」


沢山の拍手の中、

オレ達はそっと会話をする。


アカネとオレは、まだその時は

会場内に居たんだ。


「さて、

 アリスの演説も終わった事だし、

 お次は舞踏会らしく

 ダンスでもするのかしら?」

「…まあそうだろうな、

 今のうちにアリスの奴を捕まえておく。」

「えぇ、行ってらっしゃい。」


アカネから離れようとするオレ。


しかし、


―スッ……―


…オレ達の目の前に現れる1人の男。

オレもアカネも客人も皆がアリスの方を向いている中、

その男だけはオレ達の方を、つまりは

アリスの居る方とは逆側を向いていて、

明らかその男だけが異様な雰囲気を醸し出していた。


「……?」


俯きがちな顔をソッと上げる男。

そして、








「…お久しぶりですね、黒龍………。」










「………………っ前は………!!!」


その男は、そう、

俺が1番嫌うあいつで、


「…何しに来た……!!」

「…嫌ですね、

 私がここに来る理由を作ったのは

 貴方達だって言うのに……。」


オレは徐々に殺気立っていった。


「…?

 黒龍、この人と知り合いなの……?」


首を傾げるアカネ。


「…これはこれは、

 貴女の美しさはよく噂で聞いておりますよ、

 アカネ姫。」


アカネの方へと歩いていくあいつ。


「いえいえ、私よりアリスの方が綺麗よ。

 ところで貴方は?」


なんの危機感もなくあいつと話すアカネ。


「……アカネ姫はとても綺麗ですよ、でも確かに

 アリス姫よりかは劣ってしまうでしょうが……。」

「………。」


眉がピクリと動くアカネ。


「…あぁ、外見の話をしているのではありません。

 気を悪くしてしまったら

 申し訳ありません。」

「……外見の話じゃなきゃ

 なんの話を貴方はしているの?」


ムッとした様な表情で

そういうアカネ。


「…なんの話って……、」


…そう言ったあいつの魔力に

殺気が混じり始めていた事に

オレ達は気が付かなかった。


「…‘心’の話をしているのですよ、アカネ姫……。」


…そう言ってあいつは

意味深な笑みを浮かべた。



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