幽閉少女 文

□幽閉少女の始まり
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―昔々ある所に、

1人の女の子が居ました。

女の子は‘特別’な存在でした。


その為家族からは沢山の愛情を注げられ、

大切に育てられ、

いつしか女の子は

とてもとても綺麗で純粋な少女へと育てられていきました。


しかし、少女は‘特別’な存在なのです。

少女は常に沢山の人間に

その身を狙われ続けていました。

そして、ついに、

恐れていた事態が起きてしまったのです。


まず、

少女の家が焼かれてしまいました。

そして、

焼けた家から逃げ出してきた少女の家族が

全員殺されてしまったのです。


少女はただただ逃げました。

家族が殺されたとも知らずに、

背後で家が焼け崩れようとも、

ただただ走り、

ただただ逃げました。





―冬、

寒くて冷たくて

四季の中でも1番厳しい時期。


雪が燦々と降る中、少女は

素足でボロボロになった衣服を纏って

ただただ地面に座っていました。


寒い、帰りたい、悲しい、寂しい。

様々な気持ちが交差する中、

どんどんと少女の体温は下がっていきました。





―足音、

意識がはっきりとしない少女の耳に、

1つの足音が聞こえました。


足音は確実に少女に向かってきていました。

積もった雪を踏みしめている足音は、

やがて、

少女の目の前で止まりました。


少年です。

1人の少年が少女を見下ろしているのです。


「…取引をしないか。」


そう少年が言いました。


「僕の名前はJ。

 僕は君が欲しい。

 僕の元に来てくれるというのであれば、

 僕は君の安全を約束する。

 僕も君の事を手荒に扱わないし、

 君に乱暴をしようとする者からは

 僕が君を守る。

 ただし、

 そのかわりに君は―――――」


…意識の朦朧としている少女の耳には、

少年の、

悪魔の誘いの様に甘い誘惑。


判断がはっきりとできない状況の少女は、

思わず死にたくないという思いから

1つ、首を縦に振ってしまいました。


「…交渉成立だな。

 今日から君は僕の物だ。」


少年はニヤリと悪魔の笑みを浮かべました。

少女はその笑みにぶるりと1つ、身震いをしました。





―こうして‘特別’な存在の少女は

1人の少年の手に堕ちました。

こうして少女は安全を約束される変わりに、

少女の身柄と少女の‘自由’を

少年Jに奪われてしまいました。





これが、

少女が‘幽閉少女’と呼ばれる様になる

所以でしたとさ。

おしまい。





 

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