昔々ある所に、
1人の少女と1人の少年が居ました
2人の髪は青色
それは
貴族の血を引く者だけが
先代から受け継がれる気高き色
青髪の少女は
兄である少年よりも何もかもが優秀でした
ありとあらゆる物、
それら全てが少年よりも優れていて、
少女はその家の跡を継ぐ事が
決定づけられていました
しかし、
現当主であった少女と少年の父は、
大層気まぐれな人でした
ある時、
父は少女にこう言いました
「自分の跡をお前には継がせない」と……
その言葉は、少女が何よりも恐れていた言葉でした
自分は今まで何の為に努力してきたのか、
自分は何故跡を継いではいけないのか、
兄よりも努力してきた自分の何処が
兄よりも劣っているのか、
問いばかりが頭の中に浮かんできて、
答えばかりが浮かんできませんでした
事実、
少女は少年よりもどの面でおいても優れていました
少女は少年よりも劣っている所は1つもありません
それは誰が見ても、
そう思う様な事でした
しかし、
少女は幼いながらにしてとても真面目でした
父の気まぐれだという事も気が付かず、
長い時を、
多くの問いの答えを見い出す事に全てを捧げました
やがて少年は、
少女の持ち得ていた実力を
どんどんと抜いていきました
少年は天才型、少女は秀才型
少女があんなにも努力をして得た実力を、
少年はほんの少しの努力で
手に入れてしまうのでした
益々少女の中に生まれる問いは数を知れず
やがて、
少女は答えを得る為に、
家を飛び出しました
それに驚いたのは
兄である少年と、
気まぐれで次期当主から少女を外してしまった
現当主である父でした
少女がどんなに思いつめていたかも知らずに、
自分達は己の事しか考えていなかった事を恥じ、
2人は己の用いる力全てを使って
少女を探しました
しかし、
少女は見つからない
何年探し続けても、
見つからない
どれだけ時間とお金を費やしても、
少女は自分達の元へと戻ってきてはくれない
その真実はやがて
2人の心に大きな穴を開けたのでした
少女が帰ってきたのは5年後の冬
血だらけで
髪を紫色に染めた少女が家に転がり込んできました
2人は手厚く看病し、
何も聞かずにただただ自分達の傍に置いてくれました
少女と少年と父の間には、
何年も昔に失われたあの
温かいものが芽生えつつありました
――そこに訪れた、事件
赤、紅
屋敷の全てがその1色に彩られ、
遺された少女と少年は
ただただ呆然とするしかありませんでした
現当主である父が、
何者かの手によって殺され
少女と少年のどちらかが家を継がなければなりませんでした
そして長い2人の議論の末、
辿りついた答えは、
兄である少年が家を継ぐというモノでした
少年は今は亡き先代の当主から譲り受けた組織、
自警団の団長に就任し、
政府の手によって弱体化を辿っていた自警団を
逆に政府を上回る程の権力と武力を持たせる程の
巨大化を成功させました
少女は、また一人ぼっち
仕事で忙しい少年に我が儘を言う訳でもなく
少女はただただ何もせずに、
無気力に生きていました
そんな少女に
少年からの最後の願い、
それは少女に大きな驚きを与えた
「…何言ってるの、お兄ちゃん……!?」
「…お願いだ、お前に無理を言ってるって事は分かってる。」
「だから、」
「これがお前に頼む最後の願いだ。」
その最後の願いを叶えた時、
少女の何かが変わる
神速の青