東方欠落夢

□三章、神と妖怪と‥
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下級妖怪の大群が攻めてきてから早一ヶ月が過ぎようとしていた。

俺は相変わらず里の警護と教師紛いの事をやって生活をしている。


「翔せんせ〜また明日〜♪」


『気ぃつけて帰れよ。』


ふぅ、子供相手は疲れる‥
元気があるのは良い事だが元気がありすぎる。
この間の事件の時から妙になつかれてしまった。
まぁ悪い気はしないからいいけどよ。


慧音
「お疲れ様。」


『おう、お疲れさん。』

慧音
「最近どうだ?里での暮らしは?」


『平穏そのものだ。
強いて言えば‥最近物足りないって感じがするな。』

慧音
「‥‥君はそんなに好戦的だったか?」


『あ゙〜違ぇ違ぇそんな意味じゃねぇよ。
幻想郷をこの目で見て回るってのを最近やって無かったからよ。』

慧音
「確か‥八雲 紫に連れて来られたんだったな。」


『否、ありゃ落とされたって言うんだ。』


連れて来られたなんて穏やかな方法じゃ無かった。
その点だけはハッキリとさせないと。


慧音
「つまり見聞を広めたいと言うことか。
良い心掛けだな。」


『そりゃどうも。
でだ、この辺りで何か特徴的な場所とかあるか?』

慧音
「この辺りだと‥妖怪の山だろうな。」


『何だその如何にもな場所は‥‥』

慧音
「大丈夫だ。
基本的に人間に対しては比較的友好的な妖怪が多い。
それに、妖怪の山には神社があってな。」


『神社‥?
博麗神社みたいなか?』

慧音
「明日は丁度寺子屋は休みの日だから行ってくるといい。」


『そうだな。
うし、久々に探索してみっかね。』






翌日、慧音におおまかな場所を確認して妖怪の山とやらへと向かった。

木々が生い茂り自然その物の獣道を進んで行く。

山は久しぶりだ。
俺が住んでいた所が山だったから少々懐かしく感じてしまう。



『しかし‥喉乾いたな。』


竹筒に水を入れてはきたが、今日はやたらと暑い。
そのせいか水も底をついてしまっていた。
ペース配分考えときゃ良かった‥‥




ふと何処からか水の音が聞こえてきた。

その音を頼りに進んで行くと川があった。
水は川底が見える位透き通っていて、俺はその水を飲み喉を潤わせる事ができて一息ついた。



『ふぅ‥結構歩いたが中々着かないな。』


今回の目的は妖怪の山にあるという神社だ。
まぁ神社に行って何をするでも無く、ただ行ってみるだけ。
行き当たりばったりではあるが、今までがそうだったし今更変わるものでは無いだろう。



『さてと‥そろそろ行くか。』


休憩を終えて神社へ向かおうとした時だった。


「あなた中々に厄いわね。」


『‥アンタ誰?』


気がついた時には赤いゴスロリファッションの緑髪に大きなリボンをつけた少女がそこに居た。
何故だかくるくると回っているんだが‥‥


「ごめんなさい。驚かせるつもりは無かったの。
私は鍵山 雛。貴方は?」


『柊 翔と言う。
それで、厄いって俺がか?』


「えぇ。今まで不幸な目に逢ってきたでしょう?」


不幸な目‥‥
死にかけたりした事?
それとも母親の事?

むぅ‥不幸か。
そう感じた事は無いがね。
言葉にするなら運がなかったになるだろう。



『人を勝手に不幸だと決めつけんな。
悪いが幸せか不幸かなんてのは自分が決める事だ。』


少なくとも俺は現状を気に入っているんだから。



「でも‥いいえ、貴方の言う通りだわ。
ごめんなさい。気を悪くさせてしまったわ。」


『大して気にしてねぇよ。
それで?何故俺に声をかけたんだ?』


「貴方の厄を流そうかと思ったんだけど‥貴方には必要ないみたいね。」


『厄を流す‥お祓いでもする気だったのか。』


「私は巫女じゃ無いわ。」


『だろうな。
どう見ても良いとこのお嬢さんだ。』


「私は厄神だから‥
厄を集めて流すのが私の役割なの。」


厄‥神‥‥?
神様‥いやいやいや、神様なんて居るわけが‥‥
けどここは幻想郷だ。
神様が居ても不思議じゃあ無い‥か。



『神様見たの初めてだ‥』


「貴方、私が厄神だと分かって嫌がらないの?」


『なんでよ?』


「人は私を避けるわ。
私が厄を振り撒く存在だからって‥‥」


『そうか。』


「そうかって‥それだけなの?」


『別に厄が降りかかろうとそれはアンタのせいじゃ無いだろ。』


「いいえ。
私の近くに居たら間違いなく不幸な目に逢うわよ。」


『あん?』


ベキベキベキッ‥



『あだっ!?』


いきなり木の枝が折れて俺の頭に落ちてきた。
しかも結構な太さの奴が。



「ほら、だから言ったでしょう?」


『いつつ‥まぁ言いたい事はわかった。
けどアンタは態々おれの厄を流そうとしてくれた。
アンタは悪い奴じゃ無い。
アンタは良い奴だ。』


「‥変わってるわね貴方。」


『ああ、幻想郷に来てよく言われる。』


「貴方‥外来人なの?」


『ああそうだ。
妖怪の山にある神社に向かっている途中なんだ。』


「神社‥それならこの川に沿って歩いていったら神社の階段近くに出るわ。」


『そうか。
すまんな、助かるよ。』


「別にこれ位は‥」


そうさな‥何か礼でもしないとな。
神様なんだし余計にそうしないといけなさそうに思える。



『手ぇ出してくれ。』


「手を?
これでいいのかしら?」


『ほい。』


里で暇な時間を見つけて作っていた腕輪を乗せた。



「コレ‥‥」


『道を教えてくれたお礼。
手作りなんだが、白と赤の装飾だったから丁度アンタの服と同じ色だ。』


偶然ではあるがまぁいいだろう。



『またな。
次に会った時は明るい話でも聞かせてくれや。』


あんまり長いすると日も暮れちまうからその場を後にした。

鍵山 雛、厄神様か‥
可愛らしい娘だったな。






≪雛 side≫



「柊‥翔‥‥
変わった人だったわね。」


貰った腕輪をはめてみた。白地に赤い宝石が埋め込まれている。



「綺麗‥‥ふふ♪」


変わった人だったけど‥
「またな。」‥ね‥‥



「また‥会いたいな。」
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