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□欲しいもの
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どうしよう…、でもやっぱり…最近食べ過ぎだよね。
私は食堂のメニューを眺めながら悩んでいた。
同じテーブルに座っている九楽さんはそれが面白いらしく、あれはこれは、と色んなデザートを提案してくる。
私は食後のデザートを迷っているのだった。
目の前に座る九楽さんはというと、まだ自分の昼食に取り掛かっている。
…やっぱりやめよう!
冬はどうも食べ過ぎてしまう。
私は小さく頷いた。

「私は、見てるだけで満足できる体質なんです。」
「…そんな都合のいい体質がある訳無いでしょう。」

九楽さんの笑顔につられて、私も笑ってしまう。

「…ですよね。」

口寂しさを紛らわすために、熱いコーヒーを啜る。
見てるだけで満足…できると思ってた。
もっともっと、と次々に欲しいモノが増えていく。
一緒に過ごす時間、隣の空間、…その心。
…欲しいなぁ、なんて…言える訳ないけど。
九楽さんはちらっと私の顔を見た。

「のんびりしていたら…無くなってしまうかもしれませんよ?」

そう言うと目を閉じてカップを口元へ運ぶ。

「…そうですね、誰かに取られるのは絶対に嫌です!」

私の言葉を聞いて九楽さんは首を横に振った。

「大丈夫ですよ。大村くんは、欲しい物は全て手に入れないと気が済まない性格ですから。」

私は何度か瞬きをした。

「…えっと、デザートの話ですよね?」
「違うんですか?」

「ち、違わないです!」

私は一体何を言ってるんだろう。
…もしかしたら九楽さんは他人の心の中を読めるのかもしれない。









オワリ.
 

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