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□バレンタインデーだった
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青山さんは珍しく手書きで書類にペンを走らせていた。
隣の席で別の作業をしていた私は、ちらちらとその横顔を盗み見ている。
突然、青山さんは顔を上げた。

「今日は木曜日で合っているか?」
「えっと…今日は、」

私は机に置いてあった小さなカレンダーを確認する。

「はい、木曜日…、」

2月14日…バレンタインデーだ。
あれ、嘘?もう14日?
青山さんは身を乗り出してカレンダーを見る。

「…どうなんだ?」
「も、木曜日です!」

私がそう答えると、青山さんは再びペンを走らせた。
どうしよう!!最近忙しくてすっかり忘れてた!!
でも青山さんのこの様子じゃ、きっとこの人も気づいてないんだろうな。
…後で何か買ってこようかな。手作りしたかったな。

「ああ、そういえば…」

青山さんは立ち上がり、部屋の入口に置いてある段ボールを持ってきた。

「チョコレートがあるんだが、食べるか?」

私は箱の中を覗きこむ。
バレンタイン風にラッピングされた箱がたくさん入っている。

「チョコレートって…、貰ったんですよね?」
「…だが、こんなに食べきれないだろう。」

「だからってあげちゃダメですよ!」

私の言葉に青山さんは変な顔をしている。

「これ、バレンタインデーのチョコレートじゃないんですか?」

そう言うと青山さんは目を見開いた。

「…なるほど。そういう事か。」
「気づかなかったんですか!?」

「気づかなかった。…そもそもこのようなイベント自体、私には関係が無いだろう。」
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