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□いつの間にかの初日
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そしてもう一枚開け放しているドアが有り、広い洗面所が見える。
磨りガラスのドアは浴室だろう。という事は隣のドアはトイレだ。
「…この部屋、数日は引きこもれますね。」
「過ごす時間はあまり無いけど、言われてみればそうだね。」
千鳥さんは他人事のように言って、私が持っていた枕を手に取り、ベッドの上へ放り投げた。
よく見ればいつもの服装じゃない。
「千鳥さん、寝る時は浴衣なんですか?」
紺色の浴衣が似合い過ぎている。
和服が似合うんだ。
「うん、久しぶりに着たんだけど…どうかな?」
「すごく似合ってますよ!」
しかし何故かしょんぼりとした表情になってしまった。
「まさかTシャツとハーフパンツとは…。」
それが私のパジャマなんだからしょうがない。どんなパジャマを想像してたんだろう。
「なんてね、本当に来てくれた事が何よりも嬉しいよ〜。」
千鳥さんはすぐに笑顔になると、私をベッドに座らせた。
「もう寝る?」
千鳥さんは布団をめくり、モゾモゾと潜り込んだ。
横に空いたスペースをポンポン、と叩く。
何だか恥ずかしくなってきた私は、何も言わずにそこへ収まる。