□予定なし
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「いいんですか?」
「いいよ。夏だしね!他の皆にも連絡しないと。」

千鳥さんはデスクの引き出しを開け、大きなマイクを取り出した。
その声は館内放送となって建物中に響き渡る。

『えー、業務連絡。千鳥だよ。今年の夏休みは明日から一週間!各自思う存分リフレッシュするように!』

「黒峰さん基準ですか!?」

マイクをしまう千鳥さんは笑っている。
それに突然そんな事言われても…。予定が無い。

「千鳥さんは夏休みに何をするんですか?」
「僕は休まないよ。」

「え?どうして…。」
「仕事は山ほどあるからね…。」

少し悲しそうな表情でそう呟く。

「あ、もちろんあきひさんは休んでもいいからね。」

「…。」

私は千鳥さんの表情を確認する。

「ん?」
「…じゃあお言葉に甘えて…、」

「えっ!?」

何故か驚く千鳥さん。

「…そこは、『私も一緒に出勤します!』って僕を喜ばせてくれるところじゃないの?」

必死な言葉に思わず私は笑ってしまった。

「…ですよね。」
「うん。」

千鳥さんは嬉しそうだ。

「それに、」

素早く立ち上がり、千鳥さんは私の手をそっと握った。

「二人っきりで一週間過ごせるしね。」
「…なるほど。」

仕事、捗らないだろうなぁ。










オワリ.
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