死神
□春に出会いし
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春
何度も見てきた季節
春
何度も見てきた新隊員
春
綻ぶ花のように笑う彼女を見つけた季節
春、せっかく新隊員が入ってきたのに俺は床に臥せっていた。
春先の急激な気温の変化に体がついていかず体調を崩してしまったのだ。
辛うじて入隊式にだけは出られたが、それ以来布団から離れていない。
しかし、何日も休んでいたおかげでだいぶ体調も回復し、気分も良かった。
「暇だな……」
一人呟いた声に返す者はいない。
こんな時期に寝込んでしまった為、いつもならちょくちょく様子を見にくる二人の三席も全く来ない。
暇だ
……いや、絶好の機会か?
今なら抜け出してもすぐに戻ればバレないだろから、清音や仙太郎…卯ノ花にも怒られる心配もない。
そうと決まれば、と布団を撥ね除け、若竹色の羽織りに腕を通す。
「さて、行くか」
葉桜ぐらいならまだ見えるかもしれないと意気揚々と俺は雨乾堂を抜け出した。
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