○妖狐×僕SS

□僕が学校に来た訳。
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「なんでうさ耳なの?」
「人生の遊び人だからさ☆」
「意味わかんない
「ミステリアスな
妖精さんだからね♪」

昇降口から聞こえる男女の会話
2人の女子生徒と
成人を越えただろう男性。
格段、眼をひくのは
男の頭に生えるうさぎの耳と
右目を隠す包帯だろう。

「……夏目、なにしてんだよ」
「「渡狸くん!!」」
ひょこりと現れた渡狸に
女子は手を振って声をかける
「!!軽々しく手、振るなっ
俺は不良だぞっ!」
きぃーって感じで言い返す渡狸は
若干笑っていたように見えて
夏目はクスリと笑った。

「んで、何の用だよ」
女子がまた明日とかいいながら
さっき帰って行った。
夏目の事だ。
何か用事があるに違いない。

「別に、ラスカルをいじりにきた だけだけど♪」
「なっ」

にーん、と笑った彼は
「嘘、嘘☆」
と手をひらひらした。

「じゃなんだよ」
渡狸は今にも豆狸に変化しそうだ
「僕らって、先祖返りじゃん?」
「知ってる」
「渡狸は豆狸で、僕は百眼。」
「あぁ」
「僕らは能力も持ってる」
「…そうだな」
「純粋な妖怪から狙われる」
ペラっと夏目はポケットから
"茶封筒"を取り出した。

宛先 『弁償金同封』

――ぎくり…
渡狸の顔が明らかに変わった。
ポンっ
動揺したのか豆狸に変化して
「濡れ女のヤツめ…
とかなんだか床でぼやいてる

どうやら渡狸本人は
昨夜理科室付近のまど、廊下を
戦闘中に壊れたことの
"弁償"のために夏目が来た、
と理解したようだ。

ひょい
渡狸の体が宙に浮かぶ。
夏目の眼の高さで止まった。

「なんだよー!
いいんだよ、壊したままで!!
俺は不良だからなっ!!」

ばたばた小さい四肢を動かすが
ただ宙を掻くだけだ。

元気そうだ――
豆狸は物理的戦闘能力が低い
僕、百眼もそうだ
視ることしかできない。
でも、
渡狸は戦おうとしている
学校を護るために。
仲間を護るために。
また、自分が傷付くことを省みず
他人のために生きるのだろうか

急にダンマリした夏目を
渡狸はどうやら
"視られている"
と思ったらしい。

ばたつくのを止め
「…心配かけさせて
悪かった……」
と呟いた。

考え事をしていた夏目は
驚いて多少、瞳を開けた。

自分の手に捕まれ
宙を浮いている豆狸が
可愛らしい

でも、その想いは
自分の中にしまっておこう

僕は瞳を閉じて
くすりと笑った。

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僕が学校に来た訳
君の笑顔が見たかったから
_______________→オマケ
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