●青の祓魔師
□猫の視界で。
1ページ/3ページ
貴方に武器を向けられた時
僕はひどく昔のことを思い出した
僕が5才で、志摩さんが6才になったばかりの夏の日。
僕と志摩さんは金剛深山に呼び出された。
「いったいなんやろうね」
「そうやね、坊はおらんし」
遊びなれた山を登るのは苦じゃなかった。時間をかけず着いた降魔堂前にはすでにいくつかの人影があった。2人を呼び出した八百造と蠎、そして柔造、金造、蝮、青、錦。7人の醸し出す雰囲気がやけに冷たく、顔を引き締めた。
「来たか」
八百造が口を開いた
蠎の説明で僕らが坊を護るために悪魔を見えるようにする、魔障を受けるということを理解した。
僕は蠎さんから数珠を志摩さんは八百造さんから錫杖を受け取った
渡されたものは少し大きかった。…数珠はこれから坊を護る武器になるんやって頭の片隅で思った。
「子猫丸、ついてきなさい」
「廉造、お前はこっちや」
どうやら宝生家は僕を担当するらしい。志摩さんと別れて蠎が娘を前に出した。
「まず、蛇で魔障を受けてもらいます。そしたら実践形式で数珠の使い方を教えましょう」
怖いかもしれませんがじっとしとって下さい、と声をかけると「蝮」と長女の名を呼んだ。
「オン アミリティ ウン ハッタ」
印を組んで蝮が唱えるも特に変化はみられない。当たり前だ。だってまだ僕には悪魔が見えない。
「ナーガ、腕に噛みつきぃや」
ガサ、と風もないのに下草が揺れて押し潰されながら一本の筋が向かってくる。
「左腕だしぃ」
蝮に言われるがまま左手を前に伸ばした。
…左腕が生温かい何かに包まれた
ちり、と二の腕にした小さな痛みに目を瞑った。
「いい子や、ナーガ」
蝮の声に目を開くと左肩まで爬虫類特有の低体温に触れていて、
僕の手のひら位ある2つの黄色い目が至近距離で睨んでた。
……怖い
ぶるり、と震えるとナーガは僕から離れて蝮の元に戻った。
直ぐに蠎が駆けてきて噛み痕を手当てしてくれた。
大丈夫ですか、痛くはないですか、と。
その問いに「はい」と返すと少し安堵した表情になり、では次に進みましょうかと言った。
数珠を使った初めての特訓は蠎の詠唱をひたすら真似して3人が出すナーガの攻撃をただただ防ぐ、というものだった。
ナーガの動きを見ながら、
先程教えてもらった印を組む
「オン バサラ ギニ ハラ ネンハタナ ソワカ!!」
被申護身の印!
自分の正面に円形の盾が出現し、ナーガを弾き飛ばす。
その反動で自分自身も後ろに吹っ飛んだ。
来るべき衝撃に身構えていたが、それは来ることがなかった。
クッションの役目を果たしたらしいヒヤリとした物は蠎の腕から伸びた大蛇だった。
「大丈夫ですか、子猫丸」
プツンと腕から大蛇がはなれ手に指が形成されていくのをじっと眺めてた。
その手が僕の頭を撫でる
「子猫丸、貴方は竜士様を護る一人であると同時に三輪の血を引く生き残りでもあります。攻撃する力は要りません。護る力を極めていただきます」
さぁ、続けましょう
大蛇が消えて自分の足で立った僕の身体の中で蠎の言った言葉が自棄に煩く反響していた。