●青の祓魔師

□聖なる夜に。
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第7日課 福音書 ヨハネによる福音書1章5節 より

『光は暗闇の中で輝いている』
『暗闇は光を理解しなかった』

とある。すなわち、暗闇は光を支配することができなかった、御しれなかったのだ。

それは人に住まう底知れぬ闇も、例外無く。
光を配下とすることを決して神は赦す事は無い。

例え、その闇が、一人の少年を地の底へ落とし入れ、結果、少年の友を、最善であり、最悪の手段を選ばせる道へと、導こうとも。

暗闇が光を理解する事はできぬ。

***

本日は24日クリスマスイブ。
カレンダーに書かれた「25日 クリスマス」の文字に明陀宗の次期座主、勝呂竜士は目をやった。学校寮の代わり映えのない一室。この前までは3人で使用していだが、今は訳あって2人である。

「クリスマス、ってもなァ…」

勝呂の吐く言葉に子猫丸が小さく苦笑した。

キリスト教を中心に、世間では神の子イエス・キリストの誕生を祝い、一段と賑やかになる今日の夜。
明陀が仏教側だとしても子供、ましては日本の子供達の俺らにも関係なく皆でケーキを食べ、祈り、親からプレゼントをもらったりしてはしゃいだものだ。

でも、今年は違う。

自分達がいるここは、京都から遠く離れた東京なのだ。

皆でクリスマスを祝えない。それでも、祓魔塾を選んだ。それには後悔すらしていない。もう高校生ともなれば自分も大人なのだ、と思う。……ただ。

そう、過ごせるはずだった。

なのに、志摩が欠けてしまった。

いや、
俺が。
俺が志摩の中から欠けてしまったんや。

「くそぉ…っ!」

ギリ、と口から漏れたどうしようもない気持ちは、それを唯一聞いていた子猫丸にはどうしようもなかった。

ふと、子猫丸はクリスマスの日に教えてもらった一つの話を思い出した。

冬至の後にやってくるクリスマスとは、一番夜の長い日が終わり、昼の時間が増えていく希望の日である、と。

暗闇を照らす光の子が誕生した日。坊と志摩さんが暗闇をさ迷っているのならば、どうか2人に光をお与え下さい。

子猫丸は静かに手を合わせた。
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