夜桜 万華鏡

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 あいつはいきなり現れた。
私のところへやってきた。
そしでずかずかと私の中へ入ってきた。

 私は決して交えることを許されないのに…。
あいつは私の側にいた。
私が何を言っても何をしても…ずっと私の側にいた。

 そんなあいつが…あいつなんか…大っ嫌いだ…。





 キーキーッ!!!!っと何かが滑るような、大きな音がした。

音がした方に振り返ると、暗闇には眩しすぎる光を浴びて、誰かの悲鳴みたいなもんが聞こえてきて、そしてそれは俺に…。

 あ、俺死ぬ。絶対に。
あぁー俺の人生今日からだったのにな。

今日から新しい何かが始まる予感がしてたのに。ほんの数時間で俺の新しい人生が終わるんだ。

 こんな時って確か色んな事を走馬灯のように思い出すんだっけ…。

どうせなら何か良いこと思い出したい。

なのに、なのに、あれ…?
これ…いつだろう。
あ、確か保育園くらいの時だ。

 今もまぁ変わらないのが不満だけど、
俺は小さいときから女顔でよく女の子と間違えられてた。

母親にワンピース着せられた事もあったっけ…。そうだ!そのワンピース着せられた時だった!

 家の近所にあった、公園と言うにはお粗末すぎる広場。
滑り台と砂場だけの小さな広場。

何でか忘れたけど、ワンピースが嫌で逃げ出して…。
そこで1人でしょげながら遊んでて…。

そしたら女の子が現れて…。
どこか寂しげな雰囲気のある女の子で…、一緒に遊んだんだ。
それで仲良くなって…笑った顔が可愛かったっけなぁ…。


あの女の子の名前…なんだったっけ…?


あーこんなどうでもいい、今まで忘れてたような事、死ぬ間際に思い出すなんて。

人間の頭の中ってほんと、どーなってんだろ…。


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