夜桜 万華鏡
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「ん……。」
鳥の鳴く声、瞼の上から感じる日光。
清々しく目覚められたかの様だか、実際俺を夢の中から手を引いて目覚めさせてくれたのは、
《朝ごはん…腹…減った…》
眠り心地の良い布団に寝転ぶ俺の真上から突然降ってきた、巨大な口だった…。
「…っ!!?ぎゃぁあぁぁあぁ!!!」
咄嗟にずざざざっとお尻だけで壁側にピタリと張り付くように逃げた。
ば、化け物…!!!でっかい化け物…!!これは一体なんな…あ、そうだ…。そうだった。
俺、妖怪の住処にいるんだった…。
俺は昨日のことを鮮明に思い出した。
そして、全てが夢ならばどうか次に目を覚ました時は、ごく普通の日常の中に目覚めますように。と、祈りを捧げて床についたことも思い出した。
そして突然、夢ではなく…。
てゆうか!!俺、身の安全保証されてたんじゃなかったっけ!?一応、客人としてここにいるんじゃなかったっけ!?ここには人間を食べる輩はいないんじゃなかったのかよ!!!
俺、今絶対食われかけてたよ!!
「トト、何してる。」
声をした方を見ると、昨日の女の人が腕を組んで立っていた。そしてそれと同時に、多分この化け物が入ってきたせいだろうが、見事に破壊された襖も目に入った。
化け物は振り向くと、のしのしと女の人の方へ近寄り、顔をすりすりと擦り付けた。
《腹…減った…。》
やばい、このままじゃ1ヶ月処か、3日も経たないうちに今度こそ本当に地獄行きだ…!!
あぁ、夢だ。絶対俺はまだ深い眠りの中にいるんだ。頼むからそうであってくれ…!!
彼女は顔を青くする俺をちらりと見ただけて、特に俺には何も言わずに、というか、物凄くどうでもよさそうに、すたすたとと去っていった。
「朝ごはん、大広間」
と、言葉を残して。
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