黒薔薇代わりのキンセンカ

□足しても引いても
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「あ、晶!!!」



『うぇ!?なんで悟空が此処に!?!??』





コンビニに入った瞬間に悟空が居た。
なんだこの奇跡、今まで会った事ないのになぜ。




「すげーな!!3年ぶりにここのコンビニ来たかいあった!!」



・・・3年ぶりだったらそりゃ合わないわな・・・。






『・・・・ここらへんに住んでるの?』







「いんや、俺は三蔵と暮らしてて、もう3駅向こうなんだけど、今日三蔵彼女の家に泊まりつーから俺は八戒と悟浄のマンションに飯食いに行くついでに寄った!」



『そ、うなんだ・・・・。』





三蔵が彼女の家に泊まり・・・心臓がバクバクと音を立てる。



やっぱり彼女ぐらいいるよね。あの容姿だし、なんだかんだで優しいし。






「晶?」





『あ、ごめん!いってらっしゃい!私もご飯作るのめんどくさくてお弁当買いに来たんだよね!』


元気よく振る舞う。
心が苦しい。



此処で泣いたら駄目だ。





「んじゃ!一緒に八戒のマンションいこーぜ!」




悟空が閃いたように言う。




『なんで!?』




「今日、焼肉みたいだし一人増えても平気!」




『そういう問題じゃないでしょ!悟空だって今日初めて会ったわけだし、八戒だって悟浄だって・・・・』



昔から知っている私と違って悟空は私の事を知らない。
なのに急に誘うって悟空って変な人に寄られそうで心配だな。




「大丈夫だって!!」




『何を根拠に!』




悟空は私の手を引っ張ってコンビニを出た。
悟空の力強さに勝てなくて止まることも、振りほどくこともできずに悟空のスピードに乗って足が動く。




『待ってよ!!』




「いいから!!」



悟空は何を考えてるんだろう、一緒にご飯を食べたら思い出せるとか思っているのだろうか。













「ここ!おじゃましまーす!」

ガチャッ




『はっはぁっ・・・やっぱ私帰る!』



そのままついて行ってしまって約5分全力疾走したので呼吸が荒く、ものすごく疲れた。
悟空が私の言う事を聞かずに八戒のマンションだと思われるドアを開けた。
というよりこんなに近い場所に住んでたんだ・・・八戒と悟浄・・・。


「悟空、準備できてますよ。晶?」



『すみません、お邪魔しました帰ります!』




「なー!晶も飯食っていいだろ!?コンビニでお弁当買おうと思ってたらしいし!」




『よくない!』



「遠慮なんていいですよ。早く入りなさい。」




なんで八戒は普通に対応してるの!?
私の言葉を聞いてくれ!!




「肉ー!!」




悟空は私の手をぱっと放して八戒の家のリビングまで走っていくのが見えた。



離れた瞬間にいまだマンションの中に入っていない私はそのままドアを閉め逃げようと決め込む。



パシッ




「晶、食べていったらどうですか?」



『い、やだ!だって急に悟空だって今日会ったばっか・・・。』




「・・・悟空は覚えてないようですけど僕は前々からあなたの事は知っています。どうせこのまま自分の家に帰って泣くのでしょう?」




『なんで、』



「悟空の事ですから三蔵が彼女の家に行ったことぐらい口走ったなんて承知ですよ。一緒に食べましょ?」



疑問で言う割に私の手を思いっきり握っている八戒。




そして思いっきり引っ張った。




ガチャン。



入口のドアに勢いよく入ってしまってはもう逃げ出せない。
八戒が即座にドアのカギをロックした。





もう・・・逃げられない。







『・・・・・お、おじゃまします。』






「どうぞ。」



私はあきらめるように悟空が走っていったリビングへと足を進める。もちろん靴は脱いだ。
八戒は後ろでそんな私を見て笑ってやがる。くそぅ!







「おい、八戒!酒・・・・」




ガッシャン




『ぎゃっ!』






日本酒と思われるものを持った人が現れては瓶を落とす。




目の前でガラスの破片へと変わる日本酒、私の足元で割れたので吃驚して即座に後ろへ下がる。




「な・・・・・おまっ・・お前・・・・」





『え?』




目の前には前世と大してむしろ全く変わらない悟浄の姿が。
酒が足りなくて此処まで来たのか。





「晶だよ・・・な?」





『悟浄?もしかして──








「晶ーーーー!探したんだぞ俺はぁ!」




ぎゅううと締め付けてくる悟浄にあっけに取られる。


もしかして覚えてるの?なんていう前にだ。





『ぎゃああ地面ガラスぅう!足大丈夫!?』


割れた瓶なんて忘れてるみたいに私を抱きしめる悟浄。





「本当にいるなんてな!こんな近くに!はぁ、よかった。」
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