それすらも
□必要なのが、わからない
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「今日はここまでにしておくか。」
『はーい。』
「つうことで、俺に飲み物買ってきて。」
「あ、俺も。」
『.......ハーイ。』
CR-5、ファミリーとして構成員として入って1週間。
同じ構成員の人たちに、ルールみたいなのを教えてもらっている。
誰の部下になるかはまだ検討中とか言われたけど、分かったことは、幹部が5人だからCR−5(シーアールファイブ)って言い、組織内での重要な決め事は、評議会(ボスと5人の幹部、顧問、役員)の同意が必要。
で、役員には幹部の人の祖父もいるとか。
そして、一番重要なのは、
【オメルタの掟】
「死の掟」「沈黙の掟」「服従の掟」とも言われていて、
外部に組織の秘密を流してはならない。
自分よりも上位の構成員に逆らってはならないっていうルールだとか。
そして私は今入りだての位置にいる。
ということは、誰にも逆らえないということ。
『porcorandagio(くそったれ!)』
外に出て、頼まれた分の飲み物の買いに出る。
逆らうことが出来なくて口が悪くなった事は気のせいではない。
まぁ、色々頼んでくる性か、早い段階で、店など行きかたも分かるようになってきた。
それに、男だらけのマフィアだけあるから、ボスに遠まわしに言われたけど、性別はばらすなという事だろう。
つまり、ファミリーに入り、その数時間後で男装グッズを集め、常に男装で生活しているという事。
ドンッ
「おっとっ!」
『すっすみませんっ!!』
なんだよっと思ったが、左鎖骨にCR−5の刺繍が見えて、慌てて謝った。
「本当にわりぃ!怪我してねーか?」
「えぇ、軽く当たっただけですから。」
むしろ、これ以上心配しないでくれ。さっさとこの場を離れたい他のCR-5の奴にはっきり言って会いたくない。
私は目を逸らした、と言っても、口は動かす。失礼のないようにと思いながらも表情は引きつってるだろう。
「ジャンッもう行くぞ。」
『ッ・・・!』
「やだぁ、ダーリンてば、せっかちなんだからー。」
「ハニーのマイペースさには参るさ....ん?」
やばい、コッチを見た。
緑色の髪の色、黒縁メガネ、写真で見たのと同じだ。
いや、写真は白黒だったけどさ、背格好つうか見て分かる。
彼は・・・
『ベルナルド・オルトラーニ・・・さん。始めましてお目にかかります、先週から入りましたマコ・ササハラです。宜しくお願いしますです!』
やばいやばい心臓の音が煩すぎて自分が何言ってたのかまったく覚えてないんだけど、言葉じゃない言葉言ってたような気がする。
ベルナルド・オルトラーニ
彼はCR-5の筆頭幹部
「.....あぁ・・・!ボスが言ってた新しく入ってきた人っていうのは君のことだったのか!」
「まぢかよ・・・ボスも女の子入れちゃうとはなー、花があっていいけどよ。いいのかマフィアだぜ?」
『え?あ、男なんですけど・・・これでも。』
若干声を低めにしているが、身長もあり無理があるのかと思う。
だが、もしばれたらばれたでファミリーから追い出される可能性もある。
ただでさえ、東洋人という事で、最近常に見られ陰口を言われ、時には暴力を振られそうになったこともある。いや、実際にはされた。
ファミリー内でもそういう風に見る者もいるし。
実際のところ心が折れそうになるが、あの日ボスに啖呵切ったときの自身の強さを思い出すとこういうのは平気に思えることもある。
しょうがないからと決めつけてしまえばそれまでだ。
ただ・・・強姦だけは避けたいが。
いつ来るか分からないそれが常に警戒心をむき出しにしているからかもしれない。
私を軽蔑している意味が。
「まぢかよ。かわいいなお前。入りたてだろ?おにーさんがいろいろ教えてあげようか?」
「っ・・・いえ、いえ大丈夫なんで。すみません失礼します。」
肩を触られて、前に殴られた傷が痛みびくっとなってしまった。
何とか言いきってその場から抜け出す。
早く買わなければ・・・。
と言っても、私に話しかけてくれるメンバーたちはすごくいい人たち。
私はそれが唯一の救いだった。