黒薔薇代わりのキンセンカ

□長らくの終焉
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『ぁ・・・・さんぞ・・・』



ピリリリr....




『朝・・か。起きなきゃ。』



まだ気怠い体を起こしては、髪をかきあげ、自身を覚醒させようと頑張る。



ベットの居心地のいい場所から離れるのはすこし嫌だが、じゃないと学校を遅刻してしまう。





今日から・・・高校3年。
最後の春。




『いってきまー。』


適当に準備して、ドアを開けながら言う。

帰ってくる返事はないのは分かっているけどそれでも、言いたくなった。

一人暮らしに慣れていても、やっぱり少しさびしいから、自分を紛らわせるための言葉なんだと思う。





『桜・・・か。』



私のマンションは桜街と言われるほど、桜が周りにある。


ちょうど散る時期の桜の花びらは、桜の雨のようで綺麗だ。



私はこの場所が好きだ。





”今夜もきれいですね。”




頭に響く、古き友人たちの記憶。


私は生まれてから、中学生あたりになると、夢を見始めた。


桃源郷という場所での男4人との旅をした思い出。


その中で、私は三蔵という人に恋に落ちる。



この世に妖怪など存在しないが、なぜか夢ではすべてが現実味があって、幻想だとは思えなかった。



そして調べた。



そしたら、西遊記という中国で16世紀の明の時代に大成した伝奇小説だという事が分かった。





悟浄、八戒、悟空、そして三蔵。


彼ら4人の天竺へ向かう話。


だけど、【4人】の旅だった。


私が、その話では出てこなかった。




私の夢では確かに【5人】だったのに、書物には【4人】になってる。


やはり、あれはただの夢だったのか。




生まれ変わり──本当に私が、彼らとの旅をして、ともに死んだ存在なら。


この魂は私のご先祖様というわけだが。





そんなことは、西遊記という物語に、出てこないため、そんなことはないんじゃないかと思ってしまう。





だけど、やはり夢で見た、古き友人たちは私の中で。


現在でさえ、絆がつながっていると信じてみたくなる。




三蔵・・・夢だろうが、幻想だとしても関係ない。



私は未だ、貴方を思い続けているのだから。
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