黒薔薇代わりのキンセンカ

□途切れた線
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ずーと、ずぅーと会いたかった。



でもね、絆って物は・・・なかった。




過去より、喧嘩した時より、みんなで死んでいった時より、今の方が...つらいよ。




【途切れた線】





「ちょっと!晶ー・・・聞こえてない?」




友達が、隣で私に話しかけているんだろう。




だけどさ、




クラス表に書いてあるんだ。




”悟空”って名前が。




全く知らない同姓同名かもしれない。



だけど、すごくうれしいんだ。
また、会えたかもしれないって。



『...私と・・・同じクラス・・』




”悟空”の名前が書いていあるそのクラスには私の名前も書いてあった。




「あ、ちょっと!!」


隣でクラス表を見ていた友達を置き去りにして、自分のクラスまで走る。



目的はそこだけ。

それだけしか今は見れない。





『ぁ・・・・ご・・・くう・・』




クラスに足を踏み入れて、一瞬で悟空が誰だか分かった。



夢でみた悟空と全く変わらない。


珍しい、金晴眼にすこし濃いめの茶髪。
友達と喋っていて、無邪気な笑顔に....





悟空・・・だ。


私の夢に出てきた、悟空だ。




『悟空っ!』


悟空のそばに近寄る。


『また、会えてよかった』
涙が溢れて止まらない。

生まれてきて、今一番うれしいと思えた。


『よかった・・・会えてよかった。』




悟空が私を見ながら言う。
私は、久しぶりだなって笑顔で言ってくれるのを想像していた。



「ごめん・・・・どっかで会った?」




『え・・・・?』



時が・・・止まった気がした。






『悟空・・・夢とか見なかった?旅とかした。』



彼は誰・・・・?悟空じゃない・・?





「お前も夢みんの!?さんぞーと、悟浄と、八戒と旅した夢はよく見るけど・・・・」





『私も・・・一緒に旅してたよね?』




「んー・・・一緒にいた記憶はないんだよなー。本当にわかんねぇや、ごめん。」





手に持っていたカバンが力なく地面に落ちる。


棒立ちという言葉が似合うほどに、頭で何も思い浮かばず、真っ白のままただただ、悟空を見つめていた。






『う・・そ・・・でしょ?』


なんとか吐き出せた言葉がこれだった。



ねぇ、なんで?
同じ夢を見ていたはずなのに、同じ過去を共に歩んだはずなのに・・・・!



三蔵もいて、悟浄も八戒もいて、悟空は私の事だけ分からない?





「ごめん。悟浄とかにも、聞いてみる?あいつらも俺の前世が旅した仲間なんだ。」




『悟浄・・もいるの?』




「おう!先生やってーけど、すげーにあわねぇの!!」




『そうなんだ・・・。』


悟空が笑うから、私も笑う。
悲しいけど、思い出してもらえるのかな。



前世では、私も一緒に旅していたこと。



『悟浄・・・にも会ってみるね。』


本当は、会うのが怖い。
悟空みたいに、誰って言われるかもしれないし。





「てめぇら静かにしろ、席につけ。」





先生らしき声と、ドアが開いた音が同時だった。
同じクラスの生徒たちは、各自指定された自分の席に座る。





『えーと、私の席は・・・・』


先生が教室に足を踏み入れる前にと、黒板に書いてある席の表を見る。





悟空の・・・斜め後ろだ。


すこし嬉しくなる気持ちを抑えながら、席に着いた。
悟空が私にやったなってピースをしてくるのが分かって、笑った。
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