黒薔薇代わりのキンセンカ

□離れず近すぎず。
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壊れるほど、抱きしめて。


なんて少女マンガみたいなセリフ吐くものか。





なんでもいいから、思いだせ。



なんで私がこんなにつらくならなきゃいけないのよ。





早くしなきゃ、アナタの事、撃ち殺しちゃうかも・・・よ?





【離れず近すぎず】




「お前ら何をしているんだ。」



『三蔵っ・・・先生』



八戒の温もりに癒されてたら、ドアが開いた。
その人は、三蔵。



担任として、心配で見に来てくれたのだろうか。



それだったら、この状況はやばいかもしれない。





保険医と生徒の禁断の愛。


保険医の彼氏に会いに行きたいために、朝礼を抜け出した・・・と。


記憶が多分ない三蔵にとってはそう思っているとしか思えない。

そう思って、すぐに八戒から離れた。


「三蔵。ちょっと生徒が、ふらついたもので、キャッチした所ですよ。」





「そうは見えなかったがな。」



そう言いつつも、八戒のディスク用の椅子にドカっと座る。

本当に先生なんだろうか。





「おい、お前、あの馬鹿サルに何をした?」



『え?』

馬鹿サルって・・・悟空?
悟空がどうした。私が知りたいんですけど。


「お前を送った後、妙に思い詰めた顔をしてるからな。お前、何かしたんだろ。」


”本当に・・誰も知らないんだね。私の事”

一瞬悟空といたときに言った言葉が頭を過る。



私が・・・あんなことを言うから?
悟空が必死に思い出そうとしているの?




『そう・・・かもしれません・・・。』





「何を言った・・・?」



『っ・・・』


真剣な紫暗の瞳に吸い込まれるほどの眼力。


私を捉えて、動かさない。


怖い。そう思ったのは初めてだ。



前世のころには・・・こんな目で見られたことなかった。


初めて会った時から、こんなまるで”妖怪”を殺すときのような目で。



ただそれだけで、すべて語った。



”私を知らない”と。



八戒はなぜ、私を覚えているのかは不思議だが、悟空も三蔵も私以外の人を覚えているのも不思議だ。


なぜ、私だけがあの二人の記憶から消えているの?




「まぁまぁ、生徒同士の話じゃないですか。そんな目で睨まないで下さいよ。」




「だがな、「いいじゃないですかって言っているのが、分かりませんか?三蔵。」....チッ」
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