novel

□unknown
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自らを「魔人」というこの男、ネウロに会ってもう数ヶ月経つ。

両親が殺され、警察とともに私の前に現れた弥子ちゃん。見事に事件は解決。そのお礼にお土産を持って事務所を訪ねた時、

「あ」

「お?」

「………え?」

弥子ちゃんがまずそうな顔で私を見る、私は天井を見る。天井というか、天井に貼り付いてる、助手さんを見る。

「ふむ、謎の気配どころか存在の気配もくそもないから気づかなかった。余程存在感がないようだな」

「なっ……」

華麗に天井から降り立ち、私に顔を近づけてニヤリと笑うその顔は「不気味」を絵に描いたようなものだった。

「その存在感のなさは使えるぞ。貴様は我輩のしもべ三号だ」




しもべ三号の称号を授けられた私は、あっという間に吾代さんを抜いて二号に昇格したわけですが。

「ネウロ……」

「ん?」

「落ち着かないんだけど」

茜ちゃんとともに依頼された事件に関する調べものをしているわけなんですけど

「天井からずっとこっち見ないで!本当に落ち着かないから!」

ネウロはパソコンを使っている私を天井からずっと見下ろしている。かれこれ一時間ぐらい。

「落ち着かない、とはいわゆる気持ちの問題だろう。つまり、我輩が見ていて落ち着くと思い込めばいいのだ」

「……きもちわる」

「ん?今なんと言った?」

私が座っているソファの隣にネウロが降り立つ。はぁ、黙ってればフツーに綺麗な顔してるのにな。

「見ていて落ち着くー、なんて恋人同士じゃあるまいし」

ネウロを軽くあしらって、私は目線をパソコンのディスプレイに戻した。が、

「げぶっ」

大きな手で顔をわしづかみにされて、目線をネウロの方に戻される。

「恋人、恋愛感情というのは我輩にはよくわからない。まぁ、理屈は理解しているつもりだが」

「は…はぁ…」

乱暴にわしづかみにしていた手が離され、人差し指の先を私の唇に宛がう。

「人間は愛する者同士で唇を重ねるというが」

「あ、はぁ、うん」

ネウロが真剣な顔で私を見つめている、が、すぐに口角が上がる。

「我輩は今、貴様の唇に我輩の唇を重ねてみたいと思っている」

「はぁ!?」

「これはただの好奇心か、それとも……」

「ネ…ネウロッ……」

ふにっとした感覚が私の唇から伝わってきた。最初は優しかったのが、次第に荒々しくなってくる。ネウロの手が腰に回され、体が密着する。

「んんっ……ぅ…」

息が苦しい、でも、逃れたくないと思うのは何故なのだろう。私はネウロのこと好きだと感じたことはない、と思う。確かにたまーに私や弥子ちゃんに見せる優しさにときめいたりはするけど。

「ぷはっ……」

「何を余計なことを考えている……」

ネウロの唇が離れ、耳元にそっと触れる。

「ネウロッ…ちょっ……んんっ!?」

再び唇が重なる。優しさはあるような、ないような。わからない、何も考えられなくなる。

「…んっ…ん……」

舌が入ってき…って………

「いったぁぁぁ!!!」

「ん?ああ、すまない。我輩の唾液は酸性でな。少し酸っぱいぞ」

「酸っぱいどころじゃない!痛いよ、なにこれっ!」

少しいい雰囲気になってたし、正直うっとりしてたなに…なのに、

「痛いよ……」

「……」

唇を手で覆い、思わずうずくまる。すると、ネウロが私の髪を撫でてきた。

「どうやら、これは好奇心ではなかったようだな」

「は?」

「我輩はどうやら、貴様に欲情している。舌を絡ませたくなったのも、こうやって髪を撫でているのも、お前を求めているからだろう」

そう言うと、ネウロは私をいつもからは想像できないぐらい優しく抱き寄せた。

「ゆい……」

「んんっ…」

耳にネウロの吐息がかかる。

「ゆい。我輩を……」

「たっだいまーっ!」

「ったくよぉ、お前買いすぎなんだよ!晩飯だけだっつったろうが!」

「晩ごはんだよ、これ!……あれ?」

弥子ちゃんと吾代さんが私を、正確には私たちを見た。目は見開いている、多分驚いてるんだろう。ネウロが私を抱き寄せてるんだ、それはもう信じられない光景だろう。

「ネウロ!?」

「てっ…てめぇ!!…ゆいに何してやがる!」

「……はぁ」

ネウロがあからさまにため息をつき、いつもの特等席に戻った。

「何してやがったんだおまっグハァァッ!」

「吾代さん、大丈夫ですか?」

強力なグーパンチをくらった吾代さんはぐったりしている。いつものことだから大丈夫だろうけど。
弥子ちゃんは茜ちゃんになんとなくは教えてもらったようだ、って、何教えてんの茜ちゃん!?弥子ちゃんがあからさまに私とネウロを意識してる、そして恥ずかしそうにしてる。いやいやいや、恥ずかしいのはこっちだよ…。

「……あ、ネウロ」

「なんだ」

「さっき、何言いかけたの?」

「何のことだ。粗方酸素不足でボーッとしていたのだろう」

「うっ……違う!絶対違う!ほら、何言いかけたの?」

私の問いかけにネウロが答えることはなく、彼は窓の外遠くを眺めていた。


unknown
こんな感情が魔人の我輩にもあったのか。


:::アトガキ:::
ありがちかと、っつか今更魔人探偵かと。しかし最近アニメのDVD見てはまったのです。ネウロの唾液が酸性なのにキュンキュンして出来上がったありがちネタです(笑)




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