novel

□PLEDGE
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「まだ意識は戻らないんですかぃ?」

「ああ、なんてこった…」

総悟と近藤さんが話してる声が聞こえる。ここ最近、毎日行われる会話。私はただ目の前に横たわる愛しい人を見つめるだけだった。

「ゆい」

「なに…?」

「ちょっとは寝なせぇ。お前まで倒れちまったら、真選組の頭脳が機能しなくなっちまう。土方さんがこんなんなっちまった今、お前は副長代行なんだぜぃ?」

「いや…土方さんが起きるまで…起きてそばにいるから」

土方さんはテロの現場に向かう途中で起こった爆発の爆風に吹き飛ばされ、頭を強く打ってしまった。
彼は爆弾に気づいていた、気づいていて爆風を避けきれなかった。それは、私を庇ったことが原因だった。

「私が爆弾に気づいていれば、土方さんはこんなことにならなかったのに」

そう思うと涙が止まらなくなる。
真選組を支える私は強い女でいなければならない。そんな私を一人のただの女にしてくれる、安らげる唯一の彼が私のせいで意識不明のまま数週間眠り続けている。

「土方さん…もどってきて…かえってきてよ…早く」

大きな手を握っても、握り返してはくれない。土方さん、あなたがいないなんて考えられない。今は「愛してる」「好きだ」なんと言葉はいらない、ただ目を覚まして欲しい。それだけでいい。

「たっ…大変ですっ!」

「なんでい、山崎」

「この前のテロを起こした奴等の残党がターミナルで自爆テロを……!!」

自爆…?

「ったく、しつこい奴等のですねぃ。どうします、近藤さん」

「勿論、阻止しに行く!」

「わかってまさぁ、そんなこと。それじゃなくて、ゆいですよ」

「……ゆい」

「私、行きます」

「おっ…おい待てゆい!」

土方さんの刀の隣に立てられた私の愛刀。二つの刀を持ち、私は走って病室を出た。






「うおらぁぁあ!天人は皆殺しにしてやらぁぁあ!!」

「この国を変えるんだぁぁ!……ぅっ!?」

「な、なんだ?どうした」

「あ…あいつは!!」

爆弾を全身に巻き付けた攘夷浪士六人組のうちの一人を斬りつけ、倒れたそいつを踏みつける。

「真選組副長代行神田ゆいだ。今のうちに降伏すればしょっぴいて刑務所にぶちこまれる程度ですむが」

「っざけんなぁぁぁ!!…っ」

斬りかかってきた馬鹿の一人の首に刃先を突きつける。本当ならこのまま喉をかっきって殺してやりたいぐらいなんだ。

「人の話は最後まで聞けよ。このまま抵抗するつもりなら



テメーら全員皆殺しだ」








「……こりゃひでぇ」

「全く、副長補佐さんは暴走させちゃいけねぇや」

ターミナル玄関前は血の海。四人の浪士が転がってる。生きているのか死んでいるのかはわからない。手加減はしたつもりだけど。まぁ、正直どうでもいい。
しかし、さすがにこれだけの男を相手にして無傷でいられるわけもなく、なんだか意識が朦朧としてきた。

「このクソアマァ……ラクには死なさねぇからなぁ」

「ぅっ……」

刀は二本とも手を離れ、一人の浪士に体を抑えらている。もう一人は私の体を力任せに殴り続けた。

「お前らぁぁあ!ゆいを放せぇぇ!!」

近藤さんの声が聞こえる。単純な人だなぁ、そんなので解放するわけないのに。

「近づくな!これ以上近づいたら爆発させるからなぁぁ!!」

浪士二人は私を引きずりながら後退する。爆発はもうこりごりなんだ。お前らのせいで私の大切な人は……

「……じまえ」

「あぁ?」

「死んじまえっつったの。このまま爆発すれば…?こんなとこで爆発すれば私ら以外誰も死にはしなないと思うけど」

こいつらが居なくなればいいんだ。馬鹿なテロを目論むカスを一人でも減らしてやればいいんだ。
こいつらみたいな奴がいなければ、土方さんは……

「こいつらが死ぬのは構わねぇが、テメーが死ぬのは許さねぇよ」

「……え?」

背後でドサッと音をたてて浪士が倒れる。振り向くと、そこには愛しい彼の姿があった。

「ひ…じ…かた…さん…?」

「テメーよ、俺ぁ生きてんだから勝手に死ぬなんて許さねーからな。それにテメー、人の刀持ち出しといてこのザマかよ」

久しぶりに聞いた土方さんの声。
安堵感から涙がぼろぼろと零れ落ちるのがわかった。

「……土方さんっ…ごめんなさいっ…」

「何について謝ってんのかはわかんねーが、俺は別に怒っちゃいねぇよ」







浪士四人は死亡、二人は逮捕。翌日、私が大暴れした時であろう写真(正直よく覚えてない)とともにそんな見出しが一面を飾った。

「もう一人の鬼、ねぇ。鬼カップルたぁおっかないですねぃ」

「はいはい…あいたたた」

「大丈夫か?」

「はい…」

あっと言う間に立場逆転。私がベッドに横たわり、土方さんが私を看病(というか主に病院食にマヨネーズかけてる)している。

「……土方さん」

「ん?」

「…おかえりなさい」

私がうつ向いてそう言うと、近藤さんが総悟を連れて病室を出た。

「……ただいま」

体を気遣うようにそっと抱き締められて、私はこらえていた涙が溢れだした。

「泣くなよ」

「無理ですっ…だって…土方さんがいなくなったら…私…どうしようかって…」

「わーったから、な」

ぽんぽんと頭を撫でられ、そっと顔をあげるとどちらからともなくキスをする。何度も、何度も。

「んっ…ん…土方さ」

「俺はいなくならねぇよ。生きてお前を守る。だから、今回みたいな無茶は二度とするなよ。」

「……わかりました」

それから、何も言わずただ何度もキスを繰り返した。


PLEDGE
言葉はいらない
ただずっとそばにいて



::アトガキ::
ガ●ットさんの「PLEDGE」の歌詞の一部から何となく浮かんだ話。強い女でも女なんです。





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