novel

□ふりむいて抱きしめて
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「銀さんのバカッ!」

バチンッ!と聞いただけで痛くなってくるような音が万事屋に響き渡る。その直後、引き戸を荒々しく開け、さらに荒々しく閉める音が響いた。

「銀さん…」

「やめて新八くん、そんな俺のブロークンハートに追い討ちをかけるような目で見ないで……」

ひっぱたかれた頬を手で被いつつ、冷蔵庫からイチゴ牛乳を取り出し、一気飲みする。

「…どうしたもんかねぇ」

ボソリと呟くと神楽がニヤニヤしながら銀時を見つめる。

「銀ちゃん、女心は複雑アル。恋愛マスター神楽が相談にのってやってもいいネ」

「あぁ、恋愛マスター?酢昆布マスターの間違いだろ?」

空になったパックをゴミ箱に投げ捨て、ソファにドカッと音をたてて座る。

「……」

しばしの沈黙のあと、銀時がせきをきったように叫び出した。

「なんでだ!?俺なんかしたのか!?わけわかんねーよ!!自分の女抱きたいっつって何がわりぃーんだ?あぁん??」

「あ…あの…銀さん?」

「ゆい抱っこしながら寝たら朝勃ちするのなんか当然だろーが必然だろーが!可愛い寝顔見て銀さんのバズーカはもはや発射寸前だったのに、それをこらえて襲いかかったらひっぱたかれて出ていかれてよぉ!」

「朝から何言ってんだ!」

思いをぶちまけた銀時は頭を抱えてうなり始めた。新八はそんなくだらないことをしでかしたのかと呆れ気味、神楽はわかってるのかわかってないのか「こいつ馬鹿アル」と呟いてキッチンへ行ってしまった。




その頃、ゆいはスナックお登勢でたまと共に店の清掃をしていた。
昨日の夜、ただでさえ激しい情事で体が重たくなっているのに爽やかな朝を迎えることは許されず、朝から求められまさに不愉快MAXだった。

「あの馬鹿も若いんだ。仕方ないよ」

お登勢はそう言ったが、やはり気に入らない。銀時とそういう関係になって数ヶ月。ほぼ毎晩求められて受け入れたり断ったりしているわけだが、彼女は「もしかしたら気持ちはなくて体だけなんじゃないか」という不安を感じていたのだ。

「アイツはそんな男じゃないから安心しな」

とお登勢に言われるが、彼女もそれがわかっている。わかっているから、こんな不安を抱く自分に自己嫌悪も感じていた。銀時に対する不安と自分に対する自分嫌悪、それが今朝爆発したのだ。

「でも毎晩毎晩求められたら、私の体がもたないし…」

「ちゃんと断ったりしてるんだろう?なら問題ないじゃないか」

「んーっ……」

どうしても納得いかないゆいは箒をバサバサ忙しく動かし始める。お登勢が文句を言う前にたまに「ほこりがたちます」と制止された。

ガラガラッ!

「おらクソババァ、いるかぁコラァ」

銀時の不機嫌そうな声を聞いたゆいは素早くカウンターの下に隠れようとしたが、彼に腕を捕まれた。

「逃げんなよ…」

「……逃げてないし」

「逃げてんだろ」

「正当防衛だし」

「はぁ…?」

ゆいは銀時には決して顔を向けず、カウンターに逃げ込もうとするが、腕をひかれて叶わない。

「俺を見ろ」

「やだ」

「見ろ」

「やだ」







「悪かったよ…」

先ほどの強気な口調とはうって変わって弱々しい口調で謝る銀時。

「ゆいが俺に不安や不満感じてるのは何となくわかってたよ。でもよ、俺はゆいと…一緒にいたいんだよ。だから、今日みたいなのは勘弁してくれ」

気を付けるから、と言うと銀時はゆいの手をひいて万事屋に戻った。ゆいは抵抗せず、ただ銀時の背中を見つめていた。



万事屋の玄関、銀時はただ前を見てゆいは見なかった。何か言葉を待っているのだろう。

「銀さん」

「……なんだ?」

「私、不安だったの。そのっ…毎日毎日求められるでしょ?体だけが目的なんじゃないかって」

「……んなわけねぇだろ」

「うわっ!?」

強く腕を引かれ銀時の寝室に引きずり込まれる。そして敷きっぱなしになっていた布団にゆいを押し倒した。

「……あ」

「銀さん……?」

銀時はいったんゆいから離れ、部屋の襖を開けると

「今から大人の時間だからガキは出掛けとけっ!」

っと一方的に言い放ち、ゆいのもとに戻るとそっと抱き締めた。

「……体だけだって?」

「銀さっ…」

「そんなこと二度と言わせねぇ」

「んんっ?!」

急な深いキス。舌を絡めながら、ゆいの寝間着を脱がせていき、体を撫で回す。

「んっ…ぁっ…銀さんっ…」

「いいか、俺はお前以外の女には欲情しねーから」

「んぅっ…」

膝立ちにさせられ、銀時に胸を揉まれる。強い口調とは裏腹に手つきは優しすぎるぐらい優しかった。

「お前以外の女を抱くのなんか想像するだけで吐き気するしよ」

「ひゃっ…ぅ…」

銀時の舌がゆいの突起を舐めあげ、チュゥッと音を立てて吸い付いた。

「ァッ…銀さんっ…」

「どーすんだよお前、お前以外抱けない体にしてくれてよ?」

「そんなっ…ァァッ…ンッ…」

「好きすぎてたまんねーんだよバカ」

胸の突起を口で愛撫しながら、右手をゆっくり下へ伸ばし秘部に触れる。

「濡れてんな…ゆい、膝ガクガクだけど?」

「ひぁっ!!」

敏感な突起を愛液のついた指先で捏ね回すと、ゆいは体を支えられなくなり銀時に寄りかかった。

「限界?」

「だって…そんなぁっ…アァッ…アンッ…」

「可愛いなぁ、ほんと」

ゆいの体を布団に寝かせて足を大きく開かせると、銀時の自身の先だけを挿入した。

「ッ…銀さんっ…?」

「いや、慣らしてないしさ。大丈夫かなと」

「大丈夫だから…銀さんっ…早くっ……」

「…そんなこと言われたら銀さんやばいんだけどっ」

「アアアッ!」

銀時のものがゆいの中に一気に侵入してきた。腰を浮かせるゆいの背中に腕を回しゆっくり抱き上げる。

「対面座位ってやつ?」

「もうっ…」

にやりと笑う銀時の表情が妙に色っぽく感じるゆい。銀時に至ってはゆいの紅潮した頬、うるんだ瞳、汗ばんだ肌、全てに色っぽさを感じてるわけだが。

「……なぁ、ゆい」

「…なに?」

「とにかくな、俺が伝えたかったことはだな…」

「うん」

「俺はゆいを愛してて、えー、愛してるから毎日でも抱きたくなるわけだ。まぁ、これじゃ発情期の猫みてーで情けねぇから考えるけどよ」

「うん」

「……愛してる」

「うん、私も愛してる」

ゆいの言葉を合図に銀時が激しく動き始めた。何かを確かめ合うように何度も何度もキスを繰り返しながら。

「アッ…ンンッ…ぎ…さんっ…」

「ゆいっ…愛してるっ…」

「ふぁっ…アァッ…アァァッ!」

「ちょっ…締めんなっ…」









「銀さんのバカ」

「マジですいませんでした」

情事から一時間後、正座するゆいの前で土下座する銀時の姿があった。

「中に出すなんて聞いてないよっ」

「いや、あの、予想外の締め付けに負けてしまいまして」

「〜っ」

恥ずかしさやらなんやらでゆいの顔が一気に赤くなる。銀時は顔をあげて、ゆっくりゆいに近づき髪を撫でた。

「もしよ、妊娠したらさ」

「うん?」

「嫁にもらってやるから」

「約束だよ?」
「当たり前だっての。誰に渡すかよ」



ふり向いて抱きしめて
二度とはなさないで。



::アトガキ::
WA●DSさんの「ふり向いて抱きしめて」の歌詞の一部から。この歌好きです。しかし全体的な歌詞はこんなんじゃないです(笑)




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