novel
□サヨナラの空
1ページ/1ページ
長いような短いような三年間だった。
一人きりの教室でカラフルなメッセージで彩られた黒板を見ながら、自分の席に座ってそんなことを思った。
ガラッ
「まだ居たのか」
そう言って教室に入ってきたのは担任の銀八先生。入学した時から三年間、ずっと私の担任だった。
「まだ帰らないのか?」
先生はそう言うと私の前の席の机に座る。
もう、今日で生徒と教師という関係は終わったんだ。一年前から決意していた、この日に、先生に告白しようと。
「先生」
「んぁ?」
私は立ち上がり、先生の前に立った。
「私、あの、」
いざ言おうとすると言葉がつまる。大丈夫、振られても、もう先生と会う機会なんかほとんどないんだから。
「ずっと言いたかったことがあって」
「…………」
先生は黙ってジッと私を見つめている。恥ずかしい…。
「私、ずっと、先生のこと」
「はい、ストップ」
「え?」
先生は立ち上がると、私の頭をそっと撫でて少し笑った。
「ここまで来たらさ、さすがに俺でも予想つくんだよね」
「え、」
「俺が自意識過剰ってわけじゃないよな?」
「違うと思います…」
先生は私が告白の言葉を口にしようとしたことに気づいたようだ。そりゃ、こんな少女マンガ並みにベタなシチュエーションだもんね。
「こういうことはさ」
「うわっ」
きっと断られるんだと思ったとき、先生は力強く私を抱き締めた。顔が熱くなって、緊張で体が少し震える。
「男の俺から言うべきだろ」
「……先生?」
「好きだ、ゆい。このまま「はいさよなら」なんて、絶対したくなかった」
「っ………」
先生の言葉を聞いて、嬉しすぎて涙が溢れる。すると、先生が手がそっと私の頬を撫でた。
「おい…泣くなよ」
「だって…嬉しすぎてっ…絶対振られると思ってたからっ……」
「馬鹿か。お前しっかりしてんのに抜けてるとこあるから、一人じゃ心配でほっとけるかよ」
「先生っ……」
先生の顔がゆっくり近づいてきて、唇が重なる。ずっとずっと夢物語だと思ってたから瞬間が今、現実になった。
「絶対離さねーからな」
「離そうとしても、離れませんから」
「……はいはい」
見つめあって、笑いあって、キスをして。
学校を離れるのは寂しい、でも、私は先生との新しい出発が楽しくて幸せで、きっと誰より希望で満ち溢れてる。
サヨナラの空
サヨナラの時
それはあなたと私のハジマリになる
::アトガキ::
ありがちネタ(笑)
.