novel

□君が好きだと叫びたい
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「土方さーん」

「なんだ」

「「好き」って言ってください」

「はぁっ!?」

そんな驚き方ないじゃん、ただ好きって言ってって言っただけなのに。

「な…なんだよいきなり…」

「だって土方さん、付き合い初めてから一回も「好き」って言ってくれないから」

私はただの一般人、土方さんは真選組副長として多忙な毎日を送る人、たまの休みにしかゆっくり会えないのにさ、やっぱり言葉で確認したい。

「そんなこと言わなくても、付き合ってんだからよ。そういうことだろ?」

「んー……」

そう言って抱き締められると、私はそれ以上何も言えなくなってしまう。






「なんですかそれ?のろけ話しに来たんですか?今すぐ帰れ、ボルトの速さで帰れ俺の前からいなくなれーっ」

「まだ依頼内容話してないじゃん!」

前日のことを話すと、銀さんは頭を抱えて悶え始めた。大体ボルトの速さで帰るとか無理だし。

「なんだよー、ラブラブだろーがよー。大体あのニコチンマヨラがそんなことしてるの想像するだけで寒気するわ」

「うるさい!とにかく、土方さんに好きって言わせたいの!」

「………」

銀さんは少し考えると、私に手を差し出してきた。

「お金は後払いだよ」

「ちげーよ。ケータイ。マヨに電話かけて、俺に渡せ」

「…上手くいくの?」

「ああ、いくと思う。アイツ馬鹿だし、ヴァカだし」

私が電話帳を開いて土方さんにかける間に何回馬鹿と言われたか、それはさておき…。言われた通り、土方さんに電話をかけて銀さんに渡した。
ケータイを耳に当てるとさっと立ち上がり、私の座っているソファに腰をおろした。

「銀さん?」

「あ、もしもし、多串くん?銀さんだけどさー」

「うわぁ!?」

土方さんが電話に出たであろう瞬間、私は銀さんに押し倒された。

「ちょっと銀さん!?」

「俺さぁ、ゆいのこと好きなんだよね。お前のもんだってのも納得いかねーし、今からやっちゃうから」

そう言うと、銀さんは私の首元に顔を埋めてきた。

「ちょっとっ…!」

「ああ?やるっつったら一つだろ?童貞じゃあるまいし」

「ふぁぁっ!?」

いきなり耳に息を吹き掛けられてビックリして変な声を出してしまう。

「あー、可愛い。いい匂いするし。でもさぁ、服に若干テメーのタバコの臭いついてんだよね。うぜーから脱が……切れた」

はぁー、と大きくため息をつくと、銀さんは私から離れて自分の服の前を開けてベルトを緩めると先程座っていた場所に戻った。

「銀さん?」

「んだこら。文句あんのかこら」

「どういうつもりで…」

「自分の女が襲われてるのを助けにこねぇ奴がいるか?ほら、テメーも適当に服はだけさせて涙目になっとけ」

「そこまで…」

「リアリティーは大事だよ?わかる?ゆーあんだすたん?」

「はぁ…」

銀さんに背を向けてちょっとだけ胸元をはだけさせる。涙目は…取り敢えずほっぺたつねるか。

「いでででっ」

「お前馬鹿か、馬鹿だろ」

「うるさ」

ドンドンドン!!!

銀さんとの会話を遮るように、激しく扉を叩く音がする。

「おい!開けやがれ!!」

「お早い到着だねぇ。じゃ、ソファに寝転がって待ってな」

銀さんはそう言うと玄関の方へと歩いて行った。私は言われた通り寝転がって、取り敢えずまたほっぺたをつねってみる。直後、ガラッと戸を開ける音が聞こえた。

「そんな叩かなくてもあけるっつーの」

「っ…てめぇ…こんなことしてタダですむと思ってんのか!!」

「まぁまぁ、取り敢えず中入れば?」

ドタドタッとけたたましい足音とともに、土方さんの姿が見れた。土方さんは私にかけより、息苦しいぐらいきつく抱き締めてくる。

「土方さっ……」

「ゆい…ごめんな…すぐ来てやれなくて…」

私の首元に顔を埋める土方さん。すると、銀さんが戻ってきて「黙ってろよ」と口パクで伝えてきた。

「お前よぉ、好きな女にはちゃんと好きって言ってやらなきゃ不安になるだろ?」

「……黙れ」

「俺はちゃんと伝えてやったぜ?好きだって」

「…んなもんじゃねぇんだよ」

土方さんは私から離れて銀さんの胸ぐらを掴んだ。

「好きとか、そんなもんじゃねぇんだよ。俺は…俺はゆいを愛してるんだ!テメーなんかに渡さねぇ」

愛してる……?
私が呆然としていると、銀さんがクスクス笑い出した。

「なに笑ってんだ…」

「いや、おま、ブッフフッ…」

「殺すぞ」

「土方さん、ごめんなさい!」

「……ゆい?」






「てことで、銀さんがテメーらのためにわざわざ芝居打ってやったってわけだ。感謝しろよ」

「感謝しろよ、じゃねぇよ!!ったく…ふざけんなって…」

「ごめんなさい…」

銀さんがネタバラシをすると土方さんは物凄く不機嫌な顔をして頭をかく。

「でもよ、テメーがゆいにちゃんと好きだっつってりゃ、俺がこんなことしなくてもよかったんだぜ?」

「……うるせーよ…」

「あ、ごめーん。「愛してる」だっけぇ?」

「うるせーよっ!!」

ダメだ、この二人をほっといたら言い合い止まらない。

「ごめんなさい、私がワガママ言わなかったらこんなことにはならなかったから…ほんとにごめんなさい」

「ゆい…」

「まぁまぁ、よかったじゃん。愛の再確認的な?報酬はバッチリもらうからよろしく」

銀さんはそう言うと、土方さんと私に「帰った帰った」と言いながら軽く手を振る。

「ゆい、帰るぞ」

「えっ、あ、うん!銀さん、ありがとう」

「おうよ、金ちゃんと払いにこいよ」

土方さんに強く手をひかれ、万事屋を出て止めてあったパトカーの後部座席に乗せられた。

「ほら、山崎、出せ」

「はいはい…」

運転手は山崎さんか、申し訳ないな。そう思っていると土方さんに抱き寄せられた。さっきよりもきつく、苦しい。

「土方さんっ…くるしっ…ですっ…」

「うるせーよ」

「んっ!」

顎をもたれ、顔を上げられた瞬間キスをされる。歯の隙間から舌が割り込んできてからめられる。

「ふぅっ…ん…ぅっ……」

「……はぁ…ゆい」

「はい…」

「愛してる」

「っ…」

目を見つめられ、真剣な顔でそんな風に言われたら…顔がどんどん熱くなっていくのがわかる。

「愛してる」

「わわわかりましたからっ」

「もう二度とあんな馬鹿なことできねぇように、きっつい罰が必要だな」

「えっ……」

土方さんはニヤリと笑うと、耳元で

「今夜は嫌っていうぐらい抱いてやる」

と囁き、私から離れた。
私は赤面で硬直。土方さんはタバコをふかす。山崎さんは、半泣きになっていた。








◎後日談

「おらよ」

「なにこれ?」

「この前の報酬ってやつだ。テメーにかしは作りたくねぇ」

「ふぅん。まぁ、ありがたくいただきまーす。……でもさ」

「あ?」

「次、ゆいがあんなこと言いに来たり、テメーが泣かせたりしたら、俺がもらうから」

「…テメー」

「冗談だっつーの。ほら、帰った帰った」

「…」

(…今のは本気だっただろ。)




君が好きだと叫びたい
ほんとは毎日だって言ってやりたい。
(でも仕方ないだろ、恥ずかしいんだから)






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