novel
□はっぴぃほわいとでぃ
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―――三月十四日
生クリームに苺に、既製品のスポンジ。あー、いますぐ食いたいわコレ。いつもならとっとと手を出しているところだが、今日はそういう訳にもいかねぇ。
ホワイトデー。バレンタインにゆいからすんげー美味いチョコレート貰ったのはいいが、ギリギリの生活を送っている俺は上等なものは用意できない。
神楽や新八に相談したところ、「値段より気持ち」という結果になり手作りケーキを作ることにした。…スポンジはオーブンがねぇから仕方なく既製品に頼ったが。
「さて、作るか」
神楽と新八は今日一日お妙のとこにいてもらうことになってる。ケーキを食べた後はゆいとあんなことこんなこともできるわけだ。
俺はせっせとケーキ作りを始めた。
午後五時。
ゆいとの約束の時間。
ケーキは我ながらなかなかいい見た目だ。余った生クリームと苺も食べれたしな。
「銀さーん」
自分で作ったケーキをニヤニヤしながら見つめていると、玄関からゆいの声が聞こえた。俺は即行玄関へ行き、戸を開ける。
「いらっしゃい」
「おじゃましまーっす。…あれ?」
「ん?どうした」
ゆいは俺の顔をジッと見、クスクスと笑い出した。
「なんだよ」
「いや、銀さんっ…。もしかしてホワイトデーのお返しはケーキ?」
「え?」
なんでばれてんの?エスパーなの?
「口のはし、生クリームついてる」
そう言うと、ゆいは俺の口のはしについていたらしい生クリームを人差し指でとりペロッと舐めた。ごめん、エロい。
「じゃ、中入るね?」
「お、おう!」
ゆいを中にいれ、リビングに通す。机の上には俺の作ったケーキ。
「やっぱり!余った生クリーム食べてたんでしょ?」
「バレバレじゃねーかよ」
「銀さんのことはなんでもわかるのっ」
そう言って笑うと、ゆいソファに腰をおろして俺に隣に座ってといわんばかりに自分の横をポンポンと手で叩く。
「美味しそうだね!」
「だろ?…まぁ、スポンジは焼けねぇから既製品なんだけどよ」
「でも私のために作ってくれたんでしょ?」
「当たり前だろ」
「その気持ちだけで充分嬉しいよ。ありがとう、銀さん」
俺の頬にチュッと軽く音をたててキスをし、照れ臭そうに笑うゆい。あぁぁ、もう。可愛すぎだろーがよ。
「お前、ちょっと、可愛すぎなんだけど」
「そんなこと言って。おだてても何にも出ないんだからね」
「本音言っただけだっつーの」
立ち上がって、キッチンから取り皿とフォーク、ケーキを切るようにナイフを持ってくるとゆいはニコニコしながらそれを受け取り、ケーキを少し大きめの四等分に切ってくれた。
「ちょっと大きいかな?」
「大丈夫だろ」
「銀さんはね。私は一切れで無理かも」
二人分の取り皿にケーキを乗せて、ナイフをおくと、ゆいはまじまじとケーキを見始めた。
「すごーい、ちゃんと中にも綺麗に苺並んでる!」
「あったりめぇだろ。こうじゃなきゃショートケーキじゃねぇじゃん」
「まぁ、確かに。…食べてもいい?」
「いいぜ」
「いただきまーす」
ケーキを一口食べると、「美味しい〜」と嬉しそうに笑うゆい。あ、口もとに生クリームついてんじゃん。
「ゆい」
「なに?」
「ちょっとジッとしてろよ」
「んっ…ちょっとっ…んんっ」
ゆいの口もとについた生クリームを舐め取り、そのままキスをする。甘くて美味いなぁ、と思ってたらいつの間にか舌を入れてしまっていた。
「んんっ…ふ…ぁ……銀さんっ…」
「わりぃ。スゲー甘くて美味かったら」
「…馬鹿」
「ゆいバカだぜ、俺は」
そう言うとゆいはふっと笑って俺に軽くキスをしてきた。
「んー、もっとしてくれよ」
「今はしないもん」
「今はってことは、あとでしてくれるの?」
「…もう!」
顔を赤くしてもくもくとケーキを食べるゆい。作ってよかったな、ケーキ。喜んでくれたし。
「ゆい、愛してる」
「ん……知ってるよ」
「ゆいは?」
「……愛してるよ」
はっぴぃほわいとでぃ
―坂田銀時の場合―
◎そのちょっと後のお話
「なぁ、ゆい」
「なに?」
「生クリームまだ余ってんだけどさ」
「うん」
「生クリームプレイし」
「やだ」
「……はい」
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