novel
□はっぴぃほわいとでぃ
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今日は『ホワイトデー』というやつだ。
こんなイベント馬鹿馬鹿しいと思っていたが、今回はそんなこと思っているわけにはいかない。
ゆい、俺の有能な部下であり、恋人。
一ヶ月前のバレンタインデーに明らかに初めて作ったであろう少々いびつな手作りのチョコレートを俺にくれた。見た目はともかく、味はなかなかだったな。
そんなこんなを考えていると、いつの間にか今日の日を迎えていた。お返しは、正直用意してない。
「……どうするか」
そういえば、ゆいの髪が最近伸びてきた気がする。何もないときはともかく、動き回るには少し邪魔そうだったな。それに、俺はゆいの髪がお気に入りだ。もし、敵の返り血を浴びてあの綺麗な髪が汚れると思うと苛々する。
「よし…」
俺は宿屋を出、街に出た。
「晋助様、お呼びでしょうか」
「おう、入れ」
夜、俺はゆいを自室に呼んだ。まぁ、毎晩呼んでるんだが…。ゆいは部屋に入り戸を閉めると、俺に微笑みを見せた。
「なんだ?」
「ん?なんでもありませんよ?」
「ホワイトデーだから、期待してんだろ」
そう言うと、「バレてましたか」と言って俺の隣に腰を下ろした。俺はすぐゆいを抱き寄せて髪を撫でた。やっぱり綺麗だ、手触りもいいし、いい匂いがする。
「どうしたんですか、今日はいきなりですね」
「今日半日、お前に何をやろうか考えてた。そしたら丁度いいの思いついてよ。気に入るかはわからねぇが」
ゆいから離れ、用意していたものを渡す。
「…かんざし?」
「ああ」
そのかんざしは金色の軸で、大きめの白い椿の装飾が付いているものだ。
「お前に似合うと思ったからよ」
「ありがとうございます!…使ってみていいですか?」
「かまわねぇぜ」
ゆいは嬉しそうに髪を後ろでまとめて、かんざしをさした。
……思っていた以上に似合う。それに、白いうなじが見えて色っぽい。普段使いのためにやったつもりだったが、他の野郎には見せたくねぇな、これは。
「どうですか…?」
「ああ、似合うぜ。綺麗だ」
「もう…恥ずかしいです…」
照れ臭そうにうつむくゆいの顔をあげ、軽く口付けてやる。すると、俺の胸に思い切り飛び込んできた。
「うおっ」
「晋助様…大好きです…」
「そんなこと、知ってる」
「いじわる」
まゆを少しひそめて俺を見上げるゆいの頬に触れた。こんな顔をしていても、たまらなく愛しく感じる。
「そうだ。お前、椿の花言葉知ってるか?」
「いえ、知らないです」
「そのかんざし買った店の姉ちゃんが教えてくれたんだが…気になるか?」
「気になりますよ」
「椿の花言葉はな、『完璧な魅力』と『誇り』。白い椿は『理想の愛』って花言葉も持ってるらしいぜ。俺にとってのお前そのものだと思ってな」
そうゆいの耳元で言ってやると、ゆいは自ら俺に口付けてきた。
俺はそのまま、ゆいを押し倒して……まぁ、このあとはいつも通りだ。
はっぴぃほわいとでぃ
―高杉晋助の場合―
◎後日談
「お前、それ俺の前でしかつけんなよ」
「え!?もったいないじゃないですか!」
「お前のそのエロいうなじが他の野郎に見られるのは、お前が敵の返り血浴びて髪汚すよりむかつくんだよ」
「……可愛いとこもあるんですね」
「あ?」
「なんでもないでーす」
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