novel

□俺と君とのイメージ
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久しぶりの長めの昼休み。
俺は自販機でコーヒーを買って、そばのソファに座ってボーッとしていた。

「あれ、笹塚さんじゃん」

すると、匪口が(何故か)石垣も連れて俺の前のソファに腰を下ろす。

「ああ、おつかれ」

「お疲れ様です。あ、さっきゆいさんと会ったよ」

「そうか」

ゆい、俺の恋人。しかし最近は仕事が忙しくてすれ違いざまの挨拶はしてもゆっくり話をすることはなかった。

「そういえば、神田先輩と笹塚先輩って付き合ってるんですよね?」

「ん、ああ。そうだけど」

そう言うと石垣は不思議そうな顔をみせる。

「恋人って感じしないんですよね」

「っつかさ、ゆいさんも笹塚さんも、『恋愛』ってイメージがない。『仕事』って感じするよね」

「そうそう!」

なにやら俺達のイメージはそんな感じらしい。
確かに俺もゆいもほぼ毎日仕事漬けで、一緒に過ごす時間は他の恋人よりもはるかに少ないだろうが。

「それにさ、二人とも『性欲』なさそう」

「ぶふっ!?」

ボーッと考えている時に、いきなり匪口がそんなことを言い出すもんだから、俺は飲んでいたコーヒーを思い切り噴出した。幸い紙コップに逆流しただけですんだが。

「あー、わかるなぁ。笹塚先輩も神田先輩も一緒にいても何も起きなさそう」

「でしょ?ねぇ笹塚さん。一体二人でいるとき何してんの?」

何でお前らはそんなに俺たちの性生活に興味津々なんだ。

「別に、やることやってるよ」

「うわ!?神田先輩!」

「え、ゆい…お前いつの間にいたんだ」

「さっきからいたよ。気配を殺すのが得意だから」

いつの間にか俺の背後に現れたゆい。謎の特技を発揮させたり、さりげなくとんでもないこと言ってくれたりしたが、久しぶりにじっくり見るとやっぱり、綺麗だよな。

「でさ、やることやってるって言ったけど、それはセック」

「はいはいはい、もうこの話は終わりな」

「もう、衛士。これからが面白いのに」

「そうですよ笹塚先輩!」

前からゆいは男っぽいところがあると思ってはいたが、まさか男とこんな話を顔色一つ変えずできるとは…。

「ゆい、お前、どうしたの」

「ううん、別に。ただ、衛士が恥ずかしがる顔見てみたいなと思って」

要するにあれか、俺をいじめるってことか?

「話を戻すけど。笹塚さんはー、そのー、最中どんな感じなの?ずっといつもの顔なの?」

匪口、お前……。

「うーん。余裕があるときはこの顔だよ。ただ、一ヶ月以上しなかった時は全く余裕なくてもうすグフッ!?」

「お前、もうそれ以上喋るな」

俺がゆいの口を手で塞ぐと、ゆいはバタバタと暴れて抵抗する。

「止めないでよ笹塚さん」

「つまりあれですか?一ヶ月以上しなくて溜まりに溜まった先輩は余裕ゼロで…あれ、先輩の余裕ない顔ってどんなんだ!?」

「想像でとどめとけ」

「んーんんんんんんんーっ!!!」
(もう話さないからっー!!!)

ゆいの口から手を離し、落ち着こうと少し深めに呼吸をした、その時

「眉間にしわ寄せてね、ちょっと顔赤くなるんだよ」

完全にさっきの続きの話をし始めた。

「へー…」

「そんな先輩想像できない」

「ゆい…お前……ここで犯すぞ」

「あー怖い。おまわりさん助けてー」

「わっ、神田先輩こっちこないで!俺が巻き込まれるぅぅぅっ!!!」

俺は立ち上がって、とりあえず石垣の頭をしばき、後ろに隠れてニヤニヤしてるゆいの手を掴んだ。

「あー、衛士、恥ずかしいんでしょ」

「別に」

「ほら、匪口くん見て!ちょっと顔赤いでしょ?」

「あ、ほんとだ。笹塚さんもこんな顔…ぶふっ!」

「匪口…」

俺はゆいの手をひき、さっき座っていた場所に戻った。ゆいは隣に座って、満足したような表情で俺の顔を見ている。
……納得いかない。

「ゆい」

「なに…うわっ!?」

「ちょ…笹塚さん!」

「んんんっ…!」

ゆいをソファに押し倒し、少し乱暴かと思いながらも激しくキスをする。久しぶりの感覚と、ゆいの口からもれる色っぽい声で身体が熱くなるのを感じた。

「んっ…ふぅ…」

「あーあ。笹塚さん……」

匪口の呆れたような声が聞こえるが、そんなのはもうどうでもいい。恥ずかしいこと暴露されたんだ、同じ思いさせてやる。すると…

「おおおおおい!!!貴様ら何をしている!?」

「ぷはっ…うう笛吹さん!?」

「笛吹…あの…これは…」

タイミングの悪いことに、笛吹が現れた。眉間にきつくしわを寄せ、顔を真っ赤にしてて俺とゆいと匪口をキョロキョロと見ている。

「神田!お前を探してたらこんなとこでこんな破廉恥極まりないことをっ…!笹塚もだ!いくら二人休みがないからって…!!」

「まぁまぁ、笛吹さん、落ち着いてください」

匪口が宥めるも、ブツブツ言いながらその場を早足で去っていく笛吹。
ゆいの顔を見ると、頬を真っ赤にしてうつむいていた。

「…恥ずか」

「恥ずかしかったに決まってんじゃん!!衛士のスケベ!変態!!!」

「あ…」

ゆいはそう言うと、笛吹が行った方向へ走り去ってしまった。

「……今のは俺が悪いのか」

「まぁ、どっちもどっちかな」

「あれ…神田先輩は…?」

「やっと起きたんだ。せっかくいいもの見れたのに」

「え、何見たんだよ!!」

「ゆいさんのエロい顔」

「うおぉぉぉ!!一生の不覚!!」

「石垣、むしゃくしゃするからお前のさっき組み立ててたプラモ、ぶっつぶしてくる」

「わぁぁやめてぇぇぇっ!!」




俺と君とのイメージ
他人のイメージなんてあてにならないもんだ。








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