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□一番になれなくていい
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元々、私は気が弱かったんだ
「ありがとう」
シンタロー、好きだよ、なんていっても、シンタローには伝わらなかった。
ありがとう、なんて口では言ってるけど、本当は私の事どう思っているの。
視線の先には私は居ないんでしょ、私の知らない誰かなんでしょ?
ありがとう、なんて言ってはにかんだらもう何も言えないよ。
なんで私なの、私の知らない誰かに私は似ているの?
なんて、うつ向いて考える。
「マリー?」
不思議そうに顔をのぞきこんでくる。
あのさ、と心配してくれているシンタローに話しかける。
「ん?」
「聞きたいこと、あるの。聞いても良い?」
「聞きたい事?」
んー、と少し唸って、良いぞと言ってくれた。
「じゃあ。シンタローは、誰を見てるの?」
「えと、どういう…」
「何で私と話してるのに、私の事見てくれないの、私、分かってるよ」
「なに、」
シンタローは良くわからない、といった感じに困っていた。
実際、なんで好きだよ、と言われてありがとうと返したら俯かれたのかも全く分からなかった。
「ねえ、シンタロー、誰をみてるの?誰なの、私の知らない人は、ねえ、シンタローは、」
誰が好きなの、と聞くと、シンタローは悲しそうな顔をした
「昔の、友達。好きっていっても、恋愛じゃないとは思うんだけど、すごい仲良くしてくれてたんだよ。その子とマリーが少し似てたんだよ。」
いつも頑張ってるとこ、ふわふわしてるところ、身長、
などと、ぽつりぽつりと言ってくれた。ほんとは全然似てないのに、なんて悲しそうに笑った。
私は、少し驚いた顔をした。似てたのか、なら、
「もしかして、私の事好きになってもらえるかもしれないの?」
「え、」
凄く驚かれた。さっき好きって言ったのに。
「マリーは、セトが好きなんじゃないのか?」
「好きだけど、恋愛とは違うよ。なんか…お父さんとか、お兄ちゃんみたいな。ねえ、どうなの」
「まず、好きって事自体初めて知ったのに…」
「さっき、言ったのに」
「え、あれ、そういう意味…?」
むすっとした顔をしてシンタローを見つめる。どれだけ鈍いの。
でも、その人と私が似てるなら、希望が持てた。
別に、その人を私越しに見ていても、好きになってもらえるならいいや。と思った。
私って単純なんだな、と思った。
でも、シンタローはきっとその人を忘れる事なんてできないと思うから、それでいいんだ。
「私、一番じゃなくても良いからね」
そういって、はにかんだ。