めいん
□大切なもの
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今はもう手の届かないところに行ってしまったけど。
それでも僕は君の事が好きなんだ。
今は一人で空を見上げる毎日だけど、
あの日は二人で空を見た。
中学生最後の年の修学旅行で行ったところは空気が綺麗で空に浮かぶ星がよく見えた。
真面目な君は夜中に抜け出したら先生に怒られる、と言って嫌がったけど、
僕がそんな君を無理矢理連れ出したんだよね。
でも君は言ってくれた。
こんな綺麗な星空を見れるなら出て来てよかった、って。
無数に光る星を、君とかぞえた夜を僕はいつまでも忘れない。
今の僕は一人で見ているけど、あの日と今は同じような風が吹いているよ。
あれからいくつもの季節を越えて、時を過ごした。
君が僕と一緒に居たのは、高校生までだ。
君は僕のことを好きだといってくれて、
僕も君が好きだったのにいつまでも一緒に居るということは不可能だった。
僕達が同性同士だったから、かもしれない。
だけどそれでも、僕は君に抱いたあの思いをきっと忘れることは無い。
あのときの僕はそれが当たり前すぎて、大切なものに気づいてはいなかった。
今なら分かるんだよ、君の気持ち。
僕の胸の中にあるこの気持ちは、暖かくて優しいもの。
全部全部、君がくれたものだ。