さぶめいん

□次に目が覚めたら
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― 次に目が覚めたら、薄らぼんやりとした視界の中に貴方が居れば良い。 ―


血生臭い世界は全て嘘で、ただ平凡で平和な世界が広がっていて。
たまに遊びに来てくれるあの人が、来るといっていたのに来てくれなかった。

だから少し寂しいのと苛立ちが入り混じって、拗ねて寝たら。
次の日優しく揺り起こされて、目を開けると昨日は居なかったはずのあの人が居て。


そんな世界を夢見てみる。


柄にも無くて何だか嫌気がさすのだけれど、
それもそれでいいかな、なんて思える。
寧ろ、そうなってくれれば嬉しいとさえ考える自分が居る。


"幸せなんかいらない。"

そう言って一人で戦って来たのに、今更。
何を言っているのだと笑われても仕方が無いのは分かっている。

夢の中では苦手な笑顔だってそこそこ作れるし、
あの人だって笑ってるのだからいっその事永遠に夢の世界に浸っていたくなるものだ。

微かに訪れた平穏が、ずっとずっと。


夜眠りにつくとき、少しだけ不安になることがある。
明日になったらあの人は死んでいないだろうか。
生きていればいいな、また会える。

だけどこの時代、生きていくのだって厳しい。
常に背後には「死」の存在。
目を伏せれば見えないかもしれない。見たくなければその手段だってある。

だけど見なければ背後から斬られて、何も見て見ぬふりをして死んで行くのだ。
何とも滑稽ではないか。それこそ。

だから戦うのだけれど、彼はいつか彼と一緒に、
少しの間だけでいいからいられたら、なんて考えていた。




氷の面を持つ彼が、そんなことを心に秘めているだなんて誰も思わないのだろう。
それこそ、彼が好く、相手でさえも。

「元就さん」

そうやって名前を呼んでもらえると嬉しくて、
でも何処か恥ずかしくて面倒くさそうにしながら返答するのが癖になっていた。

「…何だ、用があるなら早々に言え、政宗」

彼は滅多に名前で人を呼ばない。
だから、政宗と呼ばれた彼は特別な存在である。

そんな大切な相手ではあるけれど、いつかは戦う日がくるのかもしれない。
彼は天下を狙い、元就は安芸を始めとした中国、つまりは領を守りたいのだから。

でもそうしたら、政宗に安芸を渡して天下を取り、二人で日ノ本を作っていけばいい。
そう考えた。だから、今では何の不安も心配もなくなっていた。


心の底から、好きで好きで、信じていた。
そう言っても過言ではなかった。


だから政宗が絡んでいる時には、策だって浅い簡単なものだった。
兵もろくに用意していなかった。
用心している、と言っても、事実有るようでないようなものばかり。


だから、





      だから、 こ う な っ た 






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