めいん

□校内放送で君に届け!
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「うーん、どうしようかな…」

渋い顔をして女の子が読むような雑誌を開きながら
半ば唸るような声を上げている少年が一人。

バレンタインが終わり、期末テストが終わり、
あと少しで高校2年生のある意味一番充実した日々が終わりを告げようとしていた。

「どうしようかな、って…。っていうかそれ女の子の雑誌じゃん」

当たり前の突っ込みを入れたのは高校1年生の少年。

それに続けて

「総司がプレゼントをしたい相手って女の子じゃないことわかってる?」

一番の問題を指摘した。

そう、茶髪に翡翠色の目をし、
整った顔立ちの少年は学園の姫とも呼ばれる「男子生徒」に恋をしていた。
しかしその男子生徒は恋になんて興味はなさそうな人物なのだ。

そして少年の名前は沖田総司。

いつも赤点ぎりぎりの点数を余裕の表情でとり、剣道部の次期部長が決まっている。

一応放送委員会の委員長も務めている。
「学園一(生徒中)のイケメン」とも呼ばれることもある。

もう一人の少年は同じく茶髪で瞳の色が丁度浅葱と千歳緑を混ぜたような色で
とても小柄な少年。本人は小柄なのを気にしているらしい。

名前は藤堂平助。赤点仲間の総司とは学年こそ違うものの、
小学校、中学校と同じな上に部活が一緒。

比較的仲も良く、昼休みや放課後は一緒にいることが多い。

彼もまた放送委員であり、昼休みの放送は総司とラジオ形式で送ることも多々。

「分かってるよ、平助君にそんなこと言われなくたってさ。」

溜息混じりな少々くらい声音は、どこへ届くことも無く下に向かって落ちて消えた。

後輩に注意されるような自分は一体なんなのだろうと
先輩としての威厳を失えば机に突っ伏した。

「あのなあ、総司。一君は頭が良くて性格が良くて何でも出来てその上顔が良くて、
剣道だってお前の次に上手いんだぜ? 次期副部長ってところがそれを物語ってるよ」

一君。その名前の主の姓名は「斎藤一」。平助の言葉の通り、何でも出来る天才。
容姿端麗、というのは女性に使う言葉だから眉目秀麗という言葉がぴったりと合う。
風紀委員長、文化祭委員長、剣道部副部長、学級委員長。

彼が務めている仕事は4つ。そして自習時間では勉強を教えるという面倒な役割も担っている。

男子生徒からも女子生徒からも憧れの存在として扱われ、
盗撮をするものは数も多く存在する。

そんな生徒は担任の土方や陰ながら恋心を抱いている総司に蹴散らされるのだが。

此処の学園の生徒に「斎藤一」と言えば誰しもが花形や姫と答えるもの。
しかし残念なのが担任の土方歳三信者なところ。

周りの生徒からは怖がられ、女子生徒からは人気の教師。
男子生徒で土方を好む人物は数少ない。

そしていけないのは土方まで斎藤信者だということ。

流石に恋愛対象ではなく、最早「仲の良すぎる兄妹」と化している。

兄弟ではなく兄妹。
土方は斎藤を妹のように接しているし、斎藤は土方を兄のように思っている節がある。
剣道部の顧問である土方に誘われて剣道部にも入ったのだ。

小さな頃から剣道をやっていて、総司を抜けばずば抜けて強かった。

同じ剣道教室に通っていて、常に総司が一番、斎藤が二番。

何気なく自分の出来そうな部活として仮入部をしに剣道部に足を運んだとき、
土方に入らないかと言われそのまま入ってしまった。

その様子をもちろん総司が面白く思うわけもなく、見るたびに苛々している。

だがはっきり言ってしまえば実際、
土方と斎藤の距離と総司と斎藤の距離では比べ物にならない。

斎藤は総司のことなど見向きもしない。

話すことといえば遅刻のことと赤点のことだろうか。

斎藤は風紀委員の仕事として門の場所で朝、生徒の遅刻をチェックしている。
遅刻した生徒の学年・クラス・名前をとり、5回遅刻をすれば反省文となる。

そして記念すべき反省文50回目を叩き出した伝説の生徒が沖田総司その人だ。

普通は皆の憧れの風紀委員長に嫌われたくないと予鈴までに殆どの生徒が門を通り抜けていくのだが、
総司はそこを敢えて遅刻をすることで強く印象付けようと企み、その巻添えをくらっているのが平助だった。

斎藤は総司に呆れきっている。
毎朝総司が来るまで門で待っていなければならないし、
必ず総司が最後に来るのだから総司が来ないことには門を閉めることも出来ない。

本音を言えば斎藤は総司を好いては居ない、と見える。

そんな相手に恋をしたのが間違いだったのだとけらけら面白そうに笑う平助に、
軽く睨みを向ける総司。その視線は殺意さえ孕ませていた。

「ちょ、え、そんな目で見んなよ!」

流石に慌てたようにごめんごめんと必死に謝り始め、
それから両手で自分の顔を隠し、微かに指の間を開いて総司の様子を伺った。

「―――良いよねぇ、平助君は左之さんという人がいて」

やり返し、という形でにやにやと笑いながら平助のお付き合いの相手の名前を口にする。

すると面白いくらい急激に顔を真っ赤にして総司の頭を叩いた。

「っ....、何するの? あくまで僕は先輩なんだからね」

叩かれた拍子に鈍い音と同時に頭を打ち付けたせいで額を押さえながら言った。
しかし平助はだからなんだ、と言いたげな顔で視線を逸らす。

「あんなあ、左之さんのことは関係ないだろ!」

平助が左之さん、と呼んだ人物は二人が通う学園の教師。
名前は原田左之助。女子生徒からは土方と同じくらいの人気があり、
更に優しいこともあり男子生徒からの人気もある。


女子生徒だけで言えば土方のファンのほうが熱狂的だが。


そして左之助は平助の恋人で、教師と生徒という、
その上男同士というまるで漫画や小説で見たことのあるような禁断恋愛。

まあ、今となっては学園中の生徒に知れ渡っている事実で。

「もう本当嫌だ。君も左之さんもリア充かっぷるとかマジ勘弁っ」

泣きそうな声音で机に突っ伏したまま言い、雑誌を平助に投げつけた。

「いってぇ!おま、何するんだよ!」

顔面に直撃した雑誌を床に叩きつけると
"土方先生と左之さんに言いつけるからな"と捨て台詞を吐き捨て、
教室を出て行ってしまった。

「はあ、」

溜息を零し、平助が出て行ってから暫くたったところでようやく立ち上がり、
夕焼け色に染まった教室を後にした。
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