めいん

□校内放送で君に届け!
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次の日も総司は遅刻をして学校に着いた。

「―――総司、あんたは何回もっと早く学校に来いと言ったら理解するんだ」

最早呆れしか込められてはいない声で溜息を零しながら表に総司の名前を書き込んだ。
このところ、というよりもう何ヶ月も総司の名前しか書かれてはいない。

「あはは、ごめんね」

悪い、などとは欠片も思っていないようでへら、と軽く笑いながら門を通った。
すると今日は斎藤も後ろをついてきていて、初めて並んで歩くこととなった日になった。

「――え、なんで君がついてくるの?」

いつもは一度遅刻者を他の紙に書き写すために職員室へ向かう。
だが今日はそれをせずに教室へ向かっていた。

「なんで、って…。俺もあんたと同じクラスだからだ」

当然のことなのになんでそんなことを聞くんだ。
そう言いたげな表情をしながらも嫌な顔ひとつせずに説明し、
総司の問いの意図を察したのか回答に付け足しをする。

「もうあんたしか遅刻者はいないからな。
薫に頼んで暫くの間あんたの分は書き込んでおいた」

何てショックな話だったのだろう。

その言葉を聴いた瞬間、総司の表情が強張った。
何故ならそんなことになったら、
もう門の前で斎藤に会うことができなくなってしまうだろうから。

「―――あ、」

でも今日は門のところに居た。もう待っている必要もないだろうに。

「何でさっき、門のところ居たの?」

総司が自然と浮かんできた疑問を口にすると、斎藤は暫く黙り込んだ。
不思議に思いながら斎藤の返答を待っていると、ようやく口を開いた。

「何で、と問われると困るな。一応、か」

何処か言葉を選びながら言っている気がするが、突っ込まないことにしておいた。






                              *








「なあなあ総司!
俺良いこと思いついたんだけど聞く?」

昼休みにいつもどおり総司と斎藤のクラスに足を運んで来た平助。

しかし今日は左之助も一緒に来ていた。

「総司、お前まだ斎藤のこと諦めてなかったのか」

面白そうに薄っすらと口角を上げながら
半ばからかうように言ったのが平助の恋人にあたる教師、原田左之助であった。

「うっわ、公開リア充だ。何なの一体…」

左之助は総司の前の席に勝手に座り、その膝の上に平助を乗せている。
周りの女子達はきゃーきゃーと黄色い声をあげ、
「左之平ですね!」なんて声を上げている女子まで居た。

―――― その声の主は雪村千鶴なのだが。

千鶴はいわゆる腐女子というもので、男性同士の恋愛が大好きな生き物。
平助や左之助、土方を抜けば彼女もまた総司の恋を応援している一人である。

「相変わらずのらぶらぶっぷりですねっ、沖田さんもいつでも応援してますよ!」

彼女は平助と同じ1年。
そこで疑問に思うのは何故2年の教室にいるのかということ。

それはきっと、
腐女子レーダーに何かが反応したからなのだろうが。

ふふふ、と恐ろしさまで含んでいる声で低く笑えば、
同人の原稿が近いので、と1年の教室に戻っていった。

「――相変わらず変わった子だよね、千鶴ちゃんって」

楽しそうに教室から出て行った千鶴の後姿をぼーとしつつも見つめ、総司がぼそりとそう零した。

「だよなあ……、って、俺そんなこと言いに来たわけじゃないの!」

総司につられ同じく何処か遠い目をしていた平助が我に帰り、
大きめの声で考えてきた"良い考え"とやらを説明し始める。

「名づけて、"校内放送で君に届け!"作戦っ」

(何その作戦名。)

流石の左之助も若干苦笑気味に溜息を零し、
総司にいたっては完全に視線を逸らしていた。

ネーミングセンスの皆無さには何を言うことも出来なかった。

「あー、えっと、平助?.......そういえば"君に届け"って映画やってたな」

苦しい助け舟に平助は顔を紅くして、
顔を隠した。

左之助は平助に慰めにはいるも
総司は興味なさそうに平助の言った言葉を脳内で繰り返した。

確かにネーミングセンスは最低だが、
もしかしたら内容によってはとても使えるかもしれない。

「平助君、それどんな作戦?」

総司がそう問うとやっと少しだけ顔を上げて、
考えてきた作戦の説明を始めた。
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