めいん

□政宗さんと僕のホワイトデー
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僕がチョコレートを刻んで湯煎していたら政宗さんがオーブンで焼いていたケーキが焼けたというサインの音が聞こえて、
そのあと政宗さんの声が後ろから聞こえた。

「沖田、これ見ろ。black☆なものが出来たぜ」

つまりダークマターだね。

確か政宗さんはケーキを焼いていたんだと思うんだけど、
なんか其処には何処かの漫画で読んだような黒い塊が鉄板の上に乗っかっていた。

「――― それ失敗作だから絶対に出しちゃ駄目ですよ」

とかいいつつ、僕もさっきから一度も上手くいったためしがないんだけど。




そんなことが続いて何回も何回も作り直していたら、
台所は魔窟と化してチョコレートや水がついてどろどろになった小麦粉とか
色んなものがこびり付いて汚い所ではなくなってしまった。

「ちょっと…。さすがに一回片付けませんか?」

一息つこうとあたりを見回せば洗ってないボールやヘラ、
チョコを刻んだまな板に卵の殻とかその他諸々散らかし放題。
こんなところじゃ美味しいものができるはずもない。

「だな…、あの失敗作たちも食べてやらなきゃなんねぇ」

焦げたケーキに見た目の悪いチョコ、
その他手当たりしだい作ったお菓子たち。

「一回休むか」

政宗さんが手を洗いながらそういったから僕はとりあえず皿洗いをしようとスポンジを手にしたとき、
ちょうど元就さんと一君が帰ってきた。

当然だけど、元就さんは台所を見るなり露骨に嫌な顔をしてそれ以上は近づいてこなかった。
一君も一君でどうしたらいいか分からないと言いたげな様子で呆然としていたんだけど。

「貴様ら…!我の居ない間に何をしているんだ!」

元々ここは元就さんと政宗さんの住んでいる家、
っていうか政宗さんが勝手に同棲してるって言ってるだけって感じでもあるんだけどそういうことだから、
僕と一君は人様の家にあがらせてもらってる、ってことになるんだよね。

それなのに容赦なく綺麗だった台所を魔窟化させちゃって、
元就さんが怒るのも仕方が無いと思う。

「honey!ようやく帰ってきたのか!俺らをおいて何処に言ってたんだ!?」

政宗さんは元就さんが怒ってるっていうのにそんなこと知らないといわんばかりの表情で自分の聞きたいことから口にして、
余計に元就さんを怒らせてしまった。

「あ、政宗さん…、元就さんは俺が暇そうだったから連れてってくれただけで…」

ああ一君。君はこんなときまでなんて良い子なんだろう。
だけどそんなんじゃ元就さんの怒りは収まらないよ、残念だけど。

「政宗…!貴様何回言ったら我の家を汚さなくなるんだ」

僕はあんまり怒られなくて、政宗さんは凄い怒られていた。
流石の政宗さんも真っ青になるくらいに。

そんな時間が15分くらい続いて、
やっと説教が終わったかと思うと政宗さんが口を開いた。

「honey、説教も良いけど俺の話も聞いてくれよ。
俺らあんたたちのために練習してたんだぜ、菓子作りの。」

そう政宗さんが言うと元就さんはきょと、と一瞬驚いたように目を見開いて、
焦げたケーキや大変なことになったお菓子に視線を向ける。

「――、あれを、か。」

きっとあんなのを人にあげるなんて頭がどうかしている、なんて思っているんだろうな。
と思っていたけど、本当はそうじゃなかったみたいだった。

「僕達、まだ練習中なだけですから、ちゃんと作れるように…。政宗さんだって…」

僕がそう言いかけると、

「もう作るでない。我はあれでいい。沖田は斎藤の言うとおりにしてやるがいいわ」

それは元就さんなりの気遣いだったのかもしれない。
これ以上無理をさせたくない、っていう。

「俺も、もういい。ありがとう、総司」

あ、もう一つ見つけちゃった。二人の共通点。
二人とも、すっごく優しいってところ。

「さ、流石俺の―――!」
「煩い。あれを片付けるのを手伝え。我も少しなら…、手伝わないこともないからな」

元就さんデレたの初めて見た、
なんて思っていたら隣から一君に声をかけられた。

「俺達も片付けるぞ」
「え、あ、うん」

人数分の皿と飲み物とコップとまあ色々必要なものを持ってリビングへ行った。
最初に口をつけたのは元就さんで、第一声目が

「―――不味い。」

だった。まあ当然の反応。

「俺ら頑張ったんだぜ、これでも!なあ、沖田?」
「まあ。単なる実力不足かな」

淡々と僕は答えて、
ふと一君の方を見ると一君と視線がぶつかった。

「――俺は、普通だ」

あれ、気を使ってくれたのかな?
それとも本当にそう思ったのか分からないけど、とにかく嬉しかった。

「とにかく、あれの処理は貴様らがしろ」

あれ、とは勿論台所のこと。

政宗さんは少し落ち込みながらも頷いて、
自分の作ったダークマターを口いっぱいに入れているところは流石の元就さんも少し笑ってしまっていた。

本当は今日はホワイトデーではないけど、
これはこれでいいかな、なんて思ったりもして。

僕と政宗さんは来年こそ、と心に誓った。





end
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