めいん

□はじめまして、こんにちは?
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「携帯と財布忘れた…」

今日から高校生。
親に迷惑をかけたくないと必死に勉強をして入った都立。
入学式は昨日終え、今日から少しずつ授業を始めていく予定。

成績優秀、真面目、万能。
そう言われ続け、今まで生きてきた。

しかしだからと言って他人を見下しているわけでもない。
自分は不自由なく暮らしたいし試験でも悪い点を取りたくは無いから勉強をしている。

万能だと言われることもあるが、運動は人並みだと思っているし、
授業への取り組み方だって人並み。

授業中に話しかけられれば少し躊躇いながらも話してしまうことだってある。
本当に真面目なのだとしたら、そうはならないだろう。
きっと他の奴のことなど、無視して授業に取り組む。

だから、自分は真面目なんかじゃないし万能でもない。
それが彼、斎藤一の考え。

それに、自分には友達が出来ないとも思っている。
勉強が出来て真面目で。そんな誤解から周りは遠ざかっていく。
近づいてくるのは大人だけ。教師や、親。

そんな生活に慣れきって、寂しいとも友達が欲しいとも思わなくなった。
それでもいいと感じるようになってしまった。
行事のときは協力していれば、誰も何も言わない。

きっとまた学校でも真面目や絡みにくいなどと
馬鹿らしい悪口を言われるのだろうと溜息を零す。

しかし今はそんなことを考えている場合ではない。
今日は入院している祖母の見舞いに学校の帰りに行く予定。
その時、花や菓子も買っていく予定だったのだ。

それなのに、財布を忘れ、おまけに携帯まで忘れてくるとは。
一旦家に帰ってもいいのだが、それでは祖母を待たせることになる。
約束をしてしまっているから、待たせては悪い。

だが初日から遅刻。
ただでさえ自分の生徒の間での評価は良くないのに、遅刻までしたら。
どこまで馬鹿にされてしまうだろう。

実際そうなったところで気にはしないが、
一応なるまでは気になったりもする。

生徒と祖母、どちらが大事かといったら勿論祖母なのだが。

「行くか…」

恐らく、大丈夫だ。遅刻はしない。
そう自分に言い聞かせて、振り返り家へと続く道を走り出した。


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