めいん

□はじめまして、こんにちは?
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「あ、やったね。間に合った」

最初から間に合う気がなかったのか、と呆れた。
しかし確かに間に合ったのは青年のおかげで、お礼を言う他ない。

「助かった。…じゃあ、俺はB組だから行く」
「うん、じゃあねー…、って僕もB組なんだけど。いつから僕はB組じゃなくなったの?」

斎藤が自分はB組だからさようなら、
といった態度をとったのが気に入らなかったらしい青年は不満げに呟く。

自らをB組の生徒だと名乗った彼に斎藤は驚き、昨日教室に居ただろうかと考えた。
彼のような明るい茶髪の生徒なら、目立つだろうから忘れない。
しかし彼を見た記憶は斎藤には無かった。

「あんたは昨日居なかったはずだが」

いくら考えても思い出せない。
恐らく居なかっただろうと思いつつ、居たとしたら失礼を承知で言ってみた。
すると青年は特に何の躊躇いも無く、驚くべき発言をした。

「ああ、僕昨日行ってないもん。学校」

昨日は入学式だった。
いくらサボり癖のある生徒だろうと、昨日くらいは学校に来ていただろう。
それなのに、入学式をサボったと淡々と言って見せた彼に、驚きを隠せない。

「行ってない、な…。昨日は入学式のはずだろう」
「あ、そうだったっけ。…そうだね、でもまあいいよ」

何が良いんだと思いながら、一年の玄関につくと靴を脱ぎ下駄箱に靴を片付け、
昨日から置いてあった校内用の靴に履き替える。

「あ、僕上履きもってくるの忘れた」

上履き、と言っても指定ではない。
普通の上履きでもいいし、履いていなければ運動靴でも良かった。
どうしようと大して困った様子も無く言葉だけで困ったような様子を現すと
斎藤の履いていた上履き代わりの運動靴に視線を向ける。

「あれ、此処って運動靴でも良いの?」
「…平気だ」

青年はそれを聞くと持っていた鞄の中から運動靴を取り出し、
それを履いて歩き出した。

「何でそんなものを持っているんだ?」

普通持ってはいないだろうと当然の疑問を感じた斎藤は青年に問いかけた。
すると青年は少し振り返り、驚いたように目を見開いて説明にうつる。

「今日から部活の体験入部始まるでしょ?だからね」

なんで入学式もサボり、上履きのことすら知らない彼がそんなことを知っているのかと
呆れながらもそんなに部活を楽しみにしているのかと少し関心してしまった。

「何部に入るつもりなんだ?」
「うーん、バスケ部か剣道部かなあ。」

剣道。
自分と同じだ。

斎藤は剣道部か弓道部に入ろうと考えていた。
小さな頃から習っていた剣道だが、弓道にも興味を示していた。
または、部活には入らないつもりで。

これからは出来るだけ祖母の見舞いにいってやりやかったし、
部活に入れば負担も大きくなる。
小さなころから育ててくれた祖母に心配や負担をこれ以上増やしたくは無い。

そんな会話をしていると、
着席の合図を知らせる鐘が鳴り響く。

「ほら、君が話し長引かせるから鐘なっちゃったよ!早く行くよっ」

そう青年は言うと、
登校時と同じように腕を引っ張って走り出した。



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