めいん

□はじめまして、こんにちは?
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鐘がなり終わると同時に教室へ入った。

「ほら、僕のおかげで間に合ったよ。感謝してね」

にこ、と小さく笑って開いている席に座った。
それも、開いている席は前の二つ。

「そこしか開いてないね。これって運命じゃない?」
「…何のだ」

何の運命だというのか。
此処まで来ると最早なんともいえない。
とりあえず教師が来るまでに席についていようと席に座った。

「先生ねー、うん。僕が知ってる人だったら嫌だな…」
「あんたは此処の教師と知り合いなのか」

だから此処の学校に入ってきたのだろうかと思った。
知っている教師が居れば、多少緊張せずに学校生活を楽しめそうだ。
それにしても、B組の担任を知らないのは昨日来ていないからなのだろう。
そうでなければ、柄にも無く落ち着かない様子にもならないはずだ。

不意に隣に座っているまだ名前も知らない彼の顔を見ていると、
何処かで会ったことのあるような気がした。
それも、顔を知っているだけではなく、いつも一緒に居たような気すらする。

だけど思い出せない。
どうやっても思い出せなかった。

それから少しの間隣の席に座った彼と話をしていると、
B組の担任、土方歳三が入ってくる。
昨日も同じだったが、女子生徒は騒ぎ始めた。

「げっ、何で土方さん…」

知り合いが土方なのだと知ったとき、斎藤は驚いた。
まさかこの二人が知り合いだとは思いもしなかったからだ。

「てめぇ総司!何で昨日来てなかったんだ!!」
「ほーら、これだから嫌なんだよ土方さんのクラス…」

本気で嫌な顔をした青年は来たばかりなのに鞄を持ち、立ち上がった。
きっと今すぐに帰ろうとでも思っているのだろう。
流石にとめようと斎藤も声をかけようとすると、
それより先に土方が青年を出席簿で殴った。

「お前は掃除だ。帰らせるわけねぇだろ」

強引に彼を座らせ、出席を取り始めた。
そこで初めて、ずっと話していた彼の名前を知ることとなる。

「沖田総司…、は居るな」

沖田総司。
何処かで聞いた名前。

何処で聞いたのか思い出したくて暫く総司の顔を見つめていると、
総司がそれに気づいたようで何、と首を傾げた。

「いや、別になんでも…」

何処かで会ったことがある気がする、などと言ったら、変な奴だと思われるだろう。
そう思ったために何も言わなかった。
だが、いつまでたっても何処かで会ったことがある、というのが気のせいには思えない。

「あのさ、こんなこと言っても変だと思わないでよ?」

自分が言うのをやめた途端、今度は総司が口を開く。
用件はなんだろうと思いつつ、思わないと返答し、総司の言葉を待つ。

「君、何処かで僕と会ったことある?多分土方さんも一緒だったと思うけど」

斎藤は驚いた。
自分と同じことを、相手も思っていたのだから。
では、やはり思い込みではなかったのだろうか。

「―――俺も、そんな気がする。」

総司に言われて土方の方を見ると、確かに前にも会ったことがあるような気がした。
総司と、自分と、土方で。
でもやはりあったことが、というよりは、一緒に過ごしていた、
というほうが正しい気がするのは変わらない。

「あ、やっぱり?」
「――何喋ってんだ総司!!…お前もだ、斎藤」

出席確認の順番が自分に回ってきたことに気づくと直ぐに斎藤は謝った。
そんな様子を見ていた総司は何で謝るのだろうと疑問に思っていた。
別にこの状況で謝る必要があるのか、と。

「…君、斎藤、一君って言うんだ。やっぱり僕は君に会ったことがあるよ」

確信したようで頷き、今世でも宜しく、と手を握られた。

「今世でも、って――。まあ、宜しく、ということになるな」

それよりも手を離せと言いたくなったが、言わないでおいた。
すると先ほども注意された二人が喋っているということもあり、
土方に二度目の注意を受けた。

「てめぇら、一体何がしたいんだ…?おい総司、お前は何で斎藤の手握ってんだよ」

土方の当然の問いには、総司は"久々の再会なんで!"と答えた。
この状況で、自分は何と言えばいいのか。
そんなことは思いつくはずも無く、今日何度目かも分からない溜息を斎藤は零した。


end?



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