めいん

□こわいはなし。
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「――――っ、」
「悲しいっていうか怖い…っていうか…」

昔、斎藤家と沖田家のあった場所にたつ学校。
その学校に通う女子数人が、夕焼けの眩しい時間になっても家に帰ることは無く、
ずっと教室で話をしていた。

「あはは、まあ、この話も本当なのかは分からないけどね?」

話をしていた本人も面白がって聞いた話をしただけ。
その真偽をしる者はいない。


本当に、いないのだろうか。


そろそろ帰ろうかと女子生徒が立ち上がり、黒い影が伸びたとき。
教室の扉が大きな音を立てて開いた。

「っまさか先公…、ってあ…、何だ。沖田君と斎藤君じゃん…」
「驚かせないでよ、まったく。それにしても何してたの?こんな時間まで」

教室に入ってきたのは風紀委員の仕事を終えた斎藤一と、
その付き添いの沖田総司だった。

「…俺は風紀委員の仕事だ」

斎藤は答えた。
いつもどおりの表情で。本当にいつもどおりなのか、彼女らには分からない。

「それよりさ、面白そうな話しをしてたね?」

隣にいた沖田が口を開いた。
こちらの彼はとても楽しそうに顔を笑顔に染めている。
彼女ら女子生徒は不思議に思った。

「うん。今ちょっと怖い話をね…」

一人の生徒が口を開いた。

「沖田総司さんって人と斎藤一さんって人の報われない恋の話なんだけ…」

話をした女子生徒がそこまで言って、自分の言葉を疑う。
何故?それは話をしっかりと聞いていれば、
ましてや話した本人なのだから余計に分かる。


登場人物は、「沖田総司」と「斎藤一」。


彼女らのクラスに居るクラスメイトの名も、「沖田総司」と「斎藤一」。
教室の時間が止まったような感覚に襲われた。

「え…?ど、同姓同名なだけ、でしょ…」
「だって、ねぇ…」

名前が同じなだけ。
そのはずだ。だってそれは昔の話。
今を生きる彼らとは違うはず。

しかし重なる箇所があるのだ。
一つは名前。もう一つは、二人の仲の良さ。幼馴染だということ。


―――ということは?


「斎藤君と沖田君は、だって…」

恋人なんかじゃないでしょ。
そう少女が口を開こうとしたときだった。

「その話、僕達じゃないって言い切れるのかな?」

そう言うと沖田はゆっくりと斎藤の肩を抱き寄せて、微笑んだ。
それと同時に、自らの首をいつもより大きく露にさせて。


少女達は目を見開いた。
少年二人は微かに口角を上げて笑った。


夕焼けで紅く染まる教室に、少女達のか細い悲鳴だけが響いた。








end



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