さぶめいん

□約束
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後日、政宗と政宗の母は元就の家へ行き、
元就の両親と元就に謝りに行った。

「いえ、良いんですよ。所詮子供のじゃれ合いで出来た怪我ですもの」

元就の母は笑って許した。
しかし、元就の額の傷は4針縫う怪我であり、
幸いにも腕の方はなんともなかった。

「本当、気にしないでくださいね。これからも元就と仲良くしてね、政宗君」

最後まで政宗の母は頭を下げながら、
しかし政宗は一言謝っただけで元就の家を後にした。




次の日、頭にガーゼと包帯を巻いた元就はいつもどおりに幼稚園に来た。
しかしいつもの光景と違うこともある。

一つ目は、皆が何処か元就の様子を伺っていること。
二つ目は、いつもなら元就が嫌がるくらいに遊びに誘う政宗が一切誘わないこと。
三つ目が、政宗が元就に話しかけないこと。

「まあ、怪我も大したこと無い…、いやそうでもないけど」

佐助もどう対応して良いのか少々困りながらも、
いつものように絵を描く時間がやってきた。

「政宗殿、今日は元就殿を誘わないでござるか…?」

こういう時だからこそ誘ったほうが良い、
そう思った幸村は元就を誘うことを提案した。
しかし、案の定元親は反対。政宗は無言でいた。

「誘えるわけねぇだろ…。あんな怪我しちまってんだ。」

ふと元親は視線を元就に向け、痛々しい包帯を見つめた。
当の本人、特に痛がることもなければ政宗を避ける様子も無く、
ただいつもどおり一人で絵を描いている。

「まあ時間がたてば少しは楽になるだろ」

こういうのは時間が解決してくれるんだ。
何処で覚えたのか元親はそう言って、今まで自分が書いていたメカの絵を再び描き始めた。

「では某が少し話しかけまするよ!」

描いていたクレヨンをぽとりと机に落とすと椅子から離れて、
幸村は元就のところへと走った。

「元就殿!某元就殿と絵を描きたいと思う故、一緒にあっちへ…」
「構うな。…我は良くても政宗が気にする」

ふ、と小さく笑って元就は言った。
そうすると席を立って佐助に話しかけに行き、
今度は佐助を連れて席へとついた。

「我はこれで一人ではない。気にせずあやつらのところで遊んでおくがいいわ」

元就の気遣いだった。
幸村は一瞬どうするか迷いつつも、分かったと頷いて戻っていった。

「あれ、意外と優しい?」
「煩い黙れ。余計なことを口にするな」

はいはいごめんね、と笑いながら元就の描く絵を見つめていた佐助は、
途中から元就の使っていた紙に自分の絵を書き入れたことで元就の怒りを買っていた。







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