さぶめいん

□次に目が覚めたら
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「元就様っ―――!逃げて下さい!」

そう聞こえた。
おかしい。
今日は来るなんて言ってなかった。

元就は上手く整理のつかない頭の中で必死に考えていた。
今日は来れるようになったのだろうか。
だから、何も伝えることはなく来てしまったのだろうか。


そんなわけがない。


もし仮にそうだとしたら、何故政宗はこんなにも沢山の兵を連れて来たのだろう。
まだ兵を傷つけることはしていないが、きっと直ぐに始める。

暗くなってきた空に、沈もうとしている日輪。
理解できない頭でぼんやりと日を眺めていれば、
兵の「逃げてくれ」という声に目を覚まされる。


 騙 さ れ た の か 。


頭で理解するのには少しばかり時間がかかって、
それで納得するのにはもっと時間がかかって。

それでも何時ものように輪刀を手にして、
何時ものような表情を作って、
目の前に居る政宗を目を細めて睨みつける。

「ah? honeyじゃねぇか」

弦月を兜につけた彼、伊達政宗は、元就の姿を見るなり嬉しそうに口角を上げた。

(違う、これは違う。)

己に会えて喜んで居るのではない。
己を殺すために来て、探すまでも無く獲物を見つけられたから喜んでいるのだ。

でもきっと、まだ政宗は兵を斬っては居ない。
駒達も、突然の伊達襲来に驚いて、万が一を考え逃げろ等と言ったのだ。



これが幻で、何時ものように夜を越せていれば。



そう考えればどれだけそう望めば、己の望みは叶うのだろうと思わず苦笑する。
そんな中にも、政宗の声は聞こえて。

「なあhoney、早々にあんたの牛耳る此処を俺とあんたのもんに――、
勿論、奥州もあんたと俺のもんに、だぜ?」

嘘だ。
そう言って此処を渡した途端、駒を斬り終いには己をも切り捨てる。
そんなこと分かっていると再び睨みつける。

「…何のつもりだ、政宗」

低い声が響くと、政宗は驚いたようで少し焦った。
何か誤解されてしまったのかとでも思ったのだろう。

「勘違いすんなよ?あんたが此処から他をせめて、俺が奥州から他を責めれば―――」

政宗が誤解を解こうと口を開いた途端。
元就が輪刀を振った。
それも、的確に政宗を狙って。

「黙れ、我は貴様となど手を組むことは考えてないわ!」

そんな元就の発言には、周りにいた毛利軍の人間も驚いているようだった。
まさか、政宗に手を出そうとするとは、と。

「元就様!ご乱心でおられるか―――っ」






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