佐和山1
□雨の佐和山城
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雨がしとしと緑を濡す…紫陽花咲誇る佐和山はすっかり梅雨入りした
「雨の日は好かぬ!!」
先程まで机に齧付いて書を認めていた三成は、ぺいっと筆を放り出すと横で図面と睨合っていた左近の背中にぽすりと身を投げた
「…どうしました殿?」
「墨は乾かぬし!!湿気で髪は跳ねるし!!じとじとするし!!ムカつく!!」
確かに今日の殿の髪は盛大に跳ねてますなぁと笑いながら図面を手早く片付ける
―構って欲しいのだ、この困った人は―
「左近」
三成の指が
きゅう と左近の髪先を掴む
「…痛いですよ殿」
三成は更に
きゅうきゅう 髪先を掴む
「痛たた…そちらを向いて欲しいなら、口で言って下さいよっ…」
「…フン」
三成は左近の背中から離れると、先程放り出した筆を拾ってまた机に向ってしまった
―やれやれ―
今度は左近が三成の背に寄掛かってやる
「…重い!!」
「でしょうな」
ぴょんぴょん跳ねた栗色の髪を優しく指で梳いてやると
ふふんと笑いながら
「そっちを向いて欲しいのか?」
―そうきましたか…でも向いて欲しいとは言ってあげませんよ、殿―
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