佐和山1
□1600打記念・片翼
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暑い、今日はまた一段と暑い
蒸し蒸しするのに雨が降らない
空は今にも泣き出しそうなのに
ああ、嫌な天気だ
せめて風ぐらい吹けば良いのに
「暑い…」
そこら中を開放っても、むわっとした嫌な風しか入って来ない
身体中からじわじわ汗が滲む、一年で一番不快な季節だ
「殿、入りますよ」
す、と襖を開けると
青い顔で布団の真中に小さくなっている俺の主―…
殿はあまり身体が頑丈ではない
「寝てなきゃ駄目ですよ」
氷室から氷取ってきましたよ、と笑うと
すまないと小さな声で呟いて、ぱたと布団に倒れ込んだ
頼むから寝ててくれ、わざわざ俺が戻るまで待って無くていいから
氷水を張った桶に手拭を浸し硬く絞り、額にのせてやると、熱に浮かされた潤んだ瞳がこちらを向いた
「さこん」
「何です?」
そろそろ腕が伸びてきた
「…さこんの手を握っていていいか?」
不安になると殿は俺の手を握る
ええ、解ってますよ
本当なら俺だって殿を抱締めたいです
でも今は
身体を休めるのが第一ですからね―…
俺の手を両手で握締めると、安心したのか
ゆっくりと瞼を閉じた
今日で殿が倒れて三日目だ
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