藤吉郎さんから沢山の子飼いを預かって託児所みたいになりつつある俺の庵、昼寝をしていたら何時の間にか猫の子みたいに周りにみっしり引っ付かれて寝返り打ったら激突したり、
官兵衛殿があの見た目に反して子供の扱いが上手くて吃驚したりと色んな発見があって面白いっちゃあ面白いけど…

ねぇ官兵衛殿、その玉って何なの?飴ちゃんなの?俺も舐めていい?え?大人は駄目?何それ俺も舐めたい!!青いの炭酸味なんでしょ!?あ、痛っ!!

「半兵衛、官兵衛、宜しく頼むでよ」

また藤吉郎さんが寺から拾ってきたと言う赤毛の子を連れて来た、ちょこんと大人しく座っている。
官兵衛殿の両脇の間に潜り込んでもちもちしてる虎や松とはえらい違いだ。

「あの人はねぇ、子供を見ると拾って来ちゃうのよね」

藤吉郎さんと入れ違いにやって来たおねね様が子供達の為に綿入り半纏を一人一人に着せていく

「昔ねぇ…あの人、寺に預けられた事があって…その時の事を思い出すんだろうねぇ」

『口減らしに親に売られて死ぬ思いで坊主から逃げて帰って来たら、新しい男とかか様が新しい弟妹達と家族を作っとった。
何で帰って来たと言われた、儂は一生あの時のかか様の顔を忘れん』

蝮の城からさっさと隠居した俺を口説きに来た藤吉郎さんが言った言葉を思い出す

『あんな思いをする子供らをこれ以上増やす訳にはいかんのじゃ、半兵衛殿』

泥水を啜って生きてきた藤吉郎さんが天下を取る世の中なら、みんなが笑って寝首を掛かれる心配もせずに昼寝が出来る世の中をつくってくれるんじゃないかなって思ったんだ。

「…その為には信長が邪魔なんだよねぇ…ね、官兵衛殿」

「誰が天下を治めようと、子が泣かぬ世になるなら構わぬ」

藤吉郎さんの闇の部分は俺達が隠してしまえばいい、あの人は太陽のようにあればいい、
子らはその輝きだけ見ればいい、闇なんか見なくていい。




闇は先に死に逝く俺達が受け持てばいい



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