官能小説
□恋しくて…F
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「は〜い!それじゃあ、『ケイちゃん』にスタジオ入りしてもらおうかー!誰か、控え室まで呼びに行ってきてー。」
明るい照明が降り注ぐスタジオ内で、若い男が、整ったベッドを確認して声を張り上げる。
―――ここは、都内某所にある『アダルト・ビデオ製作スタジオ』。
今回は、新人でありながらアダルト業界で一躍売れっ子となった『ケイ』の主演ビデオが撮影されている。
スタジオの準備が整うまで控え室で待機していたケイを、アシスタントの男が足早に呼びに行く。
「ケイさん。そろそろスタジオ入りをお願いしま・・・・って、あれ?ケイさんってば昔のビデオ見てるんですか?」
控え室の扉を開いたスタッフは、ケイが昔のビデオを鑑賞している所に遭遇する。
「ああ、そうなの。ちょっと、懐かしくなっちゃって。こんな初々しい時があったんだなぁ・・・・なんてね。」
画面から目を離し、振り向くケイは、柔らかいウェーブのかかる髪を揺らし優しげな笑みを男に送る。
すると、男は、そのケイの微笑みで見る間に顔を赤面させた。
「ケ・・ケイさんはっ、いつも初々しくて・・・それでいて、美人で、セクシーで素敵ですッ!!あ、でも俺・・・『クルミちゃんシリーズ』も大好きなんです!素人っぽい演出にドキドキして、俺、何度もオカズにしちゃいました!」
「ふふ・・・ありがと。『クルミちゃん』のファンなんだ?昔の作品だから恥かしいわ。」
真っ赤な顔をしたスタッフを尻目に、ケイは再びテレビ画面に目を移す。
そこには、クルミという名前の少女が、三人の男によってたかって集団レイプされている場面が映し出されていた。
素人がハンディカムビデオで撮ったと丸分かりの粗雑な映像が、かえってその場の臨場感を煽り立てている。
ビデオの中の泣き叫び切羽詰まるクルミの姿を見て、人々は『まるで本当にレイプされているみたいだ』と口々に絶賛し、ビデオを購入していった。
―――だって、本当にレイプされてるんだもん。
ビデオが売れ、人に褒められる度に、ケイは心の中でそう呟いた。
運命って皮肉なもの。
ケイは画面の中の自分を見ては、つくづくそう思う。
男達はレイプ現場を撮ったビデオで『これを世間にばらされたくなかったら言う事をきけ』などと言って脅してきたが、自分から世間にばらしてしまえば、あの男達など怖くも何ともない。
それに、顔が映っているのは私本人なのだから、当然著作権は私のもの。
私が映っている私のビデオを私が売りに出して何が悪いのだろうか?
私はあのバカな男達とは違い、闇ルートのネット販売などという危険な橋など渡らず、アダルトビデオ製作会社に売り込み、正規のルートで販売している。
姑息な小銭稼ぎするよりも、こっちの方が断然実入りが良いし大金が手に入った。
しかも、人気アダルト女優としての足がかりにもなって今に至るのだから、彼らには多少なりとも感謝くらいはしてやろう。
それよりも気になるのは・・・
「ねえ、今日の相手の男優さんって誰だっけ?」
「あ、はい。今日のお相手は沢辺さんですよ。この前絡みましたよね?その時、沢辺さんはケイさんのことをすごく気に入られて、今回もぜひにって、あちらからオファーがきたんです。」
「ああ・・・そっか。沢辺さんね・・・覚えてるわ。あの人って指使いが上手で沢辺さんの指で弄られるとすぐに潮吹きしちゃうんだよね。実を言うと、私って昔は潮吹き出来なくて散々だったの。」
「ええっ!?そうだったんですか!?ケイさんの潮吹きってスゲーエロくて有名なのに・・・」
今やアダルト業界でトップアイドルとも言えるケイの特技は『潮吹き』だ。
『クルミちゃん』と呼ばれていた頃は、どれだけ責められても潮吹きが出来なかったというのに、アダルト女優となりプロの男優にかかれば見事に潮吹きが出来た。
もともと潮吹きの素質を持っていたにも関わらず、素人のクリ責めのせいで潮吹きが上手く出来なかったのだ。
そんな事情背景もあり、今では弄られれば弄られるほど、何度でも潮を吹かせる事の出来る体になった。
そうやってプロと名をはせる男優に愛撫され、ケイは『クルミちゃん』という殻を打ち破り官能の扉を開花させていった。
「ケイさん、それじゃ・・・そろそろ、本番お願いしていいですか?
「あ、はい。分かりました、今行きます。」
撮影の時間が迫っている事を知らされ、ケイは手ぶれの目立つ荒い画像のDVDを停止させると、真っ暗な画面に微笑む。
消えた画面の向こうには、集団レイプされて泣き叫ぶ『私』がいる。
自分の運命がどこかで変わってしまったのだと悲観した日もあったけど・・・
私は、今、後悔なんてしていない。
それでも、あの頃の自分を否定したりしないから、また、こうして『クルミちゃん』に会いに来るかもね。
―――じゃあね。バイバイ・・・『クルミちゃん』
また、いつか。
恋しくなる、その日まで―――
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fin