小説2

□胸を占めるのはひとつだけ
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恋の終わり企画参加作品。





胸を占めるのはひとつだけ









タバコの煙をくすぶらせて吐き出す姿がすき。
白衣を翻して歩く背中がすき。
メガネから覗く眠そうな紅い瞳がすき。
自分は嫌いだという銀髪のふわふわ天然パーマがすき。
困ると襟足をかく癖がすき。
甘党なとこも、片付け下手なとこも、変に器用なとこも、不器用な優しさも、マダオなとこも。

ぜんぶ、ぜんぶすき。

今までずっと見てきました。

ずっと、ずっと先生だけを見てきました。

最初はただ遠くから見ているだけで幸せでした。
でもそれだけじゃ、足りなくなって。

先生のその紅い瞳に映りたい、綺麗な銀髪の天然パーマに触れてみたい、その広い背中に抱きつきたい。


だんだん強欲になる自分が、怖かった。

その気持ちに先生は気づいたのか、僕を遠ざけた。

辛かった。苦しかった。

毎日先生を思うと胸が軋むように痛かった。

だから、この気持ちがこれ以上大きくなる前に。

抑さえきれなくなる前に。

苦しみに呑まれる前に。

先生、あなたにこの恋を断ち切って欲しいんです。

この恋にけじめをつけたいんです。

こんな気持ちをぶつける僕に先生からのピリオドを。

ちゃんと、言葉にして。








『…先生、僕はあなたが好きでした』



いつも僕の胸を占めるのは、先生、あなたなんです。
































********


憎らしい程のサラサラな黒髪がすき。
ちょっと大きめの学ランでちょこちょこ動く姿がすき。
丸い眼鏡越しの真っ直ぐな瞳がすき。
おかん並みの世話焼きなとこがすき。
人一倍責任感が強くて、頼まれると断れないとこがすき。
シスコンなとこも、笑った顔も、つっこむ姿も、地味なとこも。

ぜんぶ、ぜんぶすき。

今までずっとお前を見てきた。

見ることしか出来なかった。


最初はそれでもよかった。
危なっかしい行動を追うだけでも、幸せだったし、十分だった。

でもだんだんそれじゃ物足りなくて。

きれいな黒髪に触れたくて、華奢な体を抱きしめたくて、小さな唇にかじりつきたくて。…一生俺のものにしたくて。

そんな欲望だらけの気持ちが生まれた。

こんな気持ちを向けるのは新八に失礼だと思った。
気持ちだけが先走りそうで怖かった。



だから、一度新八を遠ざけた。


臆病なのだ。大人なんて。
大人なんて自分の気持ちを隠すのがうまくなっただけ。


そんな俺に、必死に潤む瞳を隠していたお前を思い出す。


……ああ、傷つけたんだ、と理解する。


このままこうして卒業して、関係が切れればなにもなかったことにできる。

そうする方がいいんだ。

なんて、虫のいい御託を並べている時点で俺はマダオなんだろうな。


なのに、あいつが。志村が。あんなこというから。
俺は抑えていたいろんなもんを解放しちまったんだよ。

しょうがねぇだろ。

いつだって俺の胸を占めるのは、新八、お前なんだから。


























********


『…先生、あの。ずっとずっと、好きでした』
『…え。』
『…だから、あの。ちゃんと言葉で言ってください。態度だけじゃ、僕、苦しいんです。はっきり切り捨ててください。』
『は!?』
『……先生は僕のことを恋愛対象として好きではないんでしょう?だから僕を遠ざけたんでしょ?』
『……』
『僕なら大丈夫です。気持ちを伝えられただけで十分なんで。』
『……わかった』


すぅ、と息を吸い込む。


『新八ぃ。』
『……はい』
『お前は色々誤解してる』
『…え?』
『だが、誤解を解く前にこれだけは言わせてくれ』
『……』
『俺はお前を好きなんかじゃない。』
『……っ、』
『俺はお前を愛してんだ』
『………へ?』
『坂田銀八は志村新八を愛しているんです。』



(俺との恋を終わりにしませんか、新八くん)
(………)
(んで、今度は愛し合いましょうかね。)
(………天の邪鬼!)






おわり。

―――――――
果たしてこれがお題に沿ったものになったのかは正直不安です……。
あ、3Z設定初めてですね、我がサイトでは。
3Z大好物ですよ、私!←

企画参加初めてな私ですが、楽しく書かせていただきました!
管理人様、ありがとうございました!!

購読感謝!


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