長編

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(…緊張、する……っ)


風呂を出て、真紀さんが待っている俺の部屋の前に立つ。

この先に彼女がいると、そう思うだけで、心臓が飛び出そうなくらいの動悸がした。


(……よし)


心の準備はできている。

ひとつ深呼吸をしてから、俺は部屋のドアを開けた。


「おかえり、拓人くん」


薄く微笑む真紀さんに、更に鼓動は速くなる。
緊張で言葉すら出てこない。


「…大丈夫?」
「は、はい……っ」


なんとか絞り出した声は情けないほどに震えていて、自分で聞いていても大丈夫だとは到底思えなかった。


「…今ならまだ、私も止められるよ?」


彼女の言葉にぶんぶんと首を横に振る。

それからゆっくりと、ベッドに座る真紀さんの前まで歩いた。


「…俺が嫌って言っても、やめないでください」


ぎゅっと彼女の背に腕をまわし、抱き着く。

もっともっと、真紀さんに近付きたいから。


「…っ」


突然ぐるんと世界が反転して、押し倒されたような状態に。

そしてそのまま、キスを強いられる。


「んっ…ふぅっ…!」
「はっ、……っ」


背中がぞくぞくした。
下半身にも興奮が表れてくる。

けれどベッドに倒れ込んだときに彼女の足が俺の足の間に入り込んできていて、太ももを擦り合わせることもできない。


「はっ…ぁ、んー…っ」
「っん、…勃ってる」
「ひあっ!?」


いきなりズボンの上から股間を指で撫でられ、恥ずかしさも手伝って変な声が出た。


「…可愛い声。もっと聞かせて」
「やっ…へ、変、だからっ…!」
「ううん、凄く可愛いよ。…上、脱がせていい?」


その言葉にびくりと身体が震えたが、抗う術も理由もないものだから頷くしかない。

ぷつりぷつりとボタンの外されていく音にすら興奮した。


「…触る、よ」
「んんぅっ…!」


お腹から胸に指を這わされるその刺激に下腹部はじわじわと熱くなって、中心部は気持ち悪いくらいにドクドクと脈打つ。

浅ましい、とは分かっていても、もどかしさ故につい真紀さんの太ももに股間を擦りつけてしまう。


と、上半身を彷徨いていた彼女の指がある一点に留まり、その部分をこりこりと刺激し始めた。


「ひあっ!?真紀さ…っそ、そこ、ぐりぐりしちゃぁっ…!」
「ここ、好きなの?」
「ひゃううっ…!!」


胸の中心、所謂乳首を捏ねくりまわされ、不安にも似た感情が身体の内を渦巻く。

なのに真紀さんは止まらず、それどころか左側の乳頭に吸い付いてきた。


「は、ぁ、んんッ!!」


手の甲を口に押し付けるも堪えきれなかった声が漏れて羞恥に顔が熱くなっていく。

こ、こんな、女子みたいな声…ッ!


「やっ…やだっ、吸っちゃ…ぁんっ!!」


胸を吸われて感じている、なんて。

これではまるで、本当に…っ


「女の子みたいだね、拓人くん」
「いっ、言わないでくださっ…ひぅんっ!!」


感じたくなんてない、のに。
こんな姿、見られたくないのに…っ!


「…我慢しないで…もっと聞かせて、可愛い声」
「やっやだっ…恥ずかしいっ…!!」
「お願い、聞きたいの」
「う…うぅ〜〜っ…」


お願い、と言われてしまっては恥ずかしいなんて理由で突っ返すこともできない。

…そんなの、反則だ。


「あ…ひゃんっ…!!」
「首も弱いの?」
「わ、分からなっ…ひぁああんっ!!」


ああ、確かに、弱いのかもしれない。

だって、首に彼女の髪があたっただけで、こんなにぞくぞくするなんて。


「…明日、体育だとか…あるかな?」
「えっ?い、いえ、ない、ですけど……っ」


唐突な話題にうっすらとした意識で答える。

ああでも、いつも通りサッカー部の練習はあるはずだ。それは言うべきなんだろうかどうなんだろうか……


「っひ、あ!?」


と悩んでいたところに走った首の痛み。

また、噛みつかれた…っ!?


「い、痛っ……!」
「んっ…もうひとつ、つけていい?」
「っえ、な、何を…?」
「キスマーク。首元に」
「へ、き、キスマーク!?」


もうひとつ、ということは先程の噛みつかれたような感覚はキスマークをつけるためのもので、それじゃあ昼のあれも…!?


「ダメ…かな?」
「やっ、あ、あのっ…だ、ダメじゃ、ない…です……っ」
「ありがと」


そう言うや否や真紀さんは鎖骨辺りにまたキスマークをつける。

…真紀さんの、シルシ。
抱かれた、証明――。

そう思うと泣きたくなるほど嬉しくて、精一杯の力で彼女を抱きしめた。




続きます→
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