長編

□番外編(前編)
1ページ/1ページ




「じゃあまたね、拓人くん」
「はいっ…!」


見送りはいいと言うので俺の部屋で彼女に別れの挨拶をすると、急に静かになった部屋に寂しさが訪れる。

最近、真紀さんのいる空間に慣れすぎて、独りでいることに抵抗すら感じていた。


次は、いつ会えるのだろう。

…真紀さんにだって都合があるし仕事だってあるから、我が儘は言えない。


(…けど、)


…あの日、から…二週間は経つ。

なのにあれから、一度もエッチは愚かキスもしていない。


したい、とは言えないし。


けれどあの快感を知ってしまったら、自分で…だとか、それじゃ満足できなくて。

なんだかんだでもう二週間、自慰もできていないのだ。


…一昨日とうとう、その…む、夢精、を、してしまったほど。

…思い出して、羞恥にぼっと顔が熱くなった。


(ああああれはっ、あ、あんな夢を、見たから…っ!!)


(夢だが)真紀さんが、キスして、な、舐めてきたり、する…から、


(いやっち、違う!お、俺は断じてそのっ、そ、そんな淫らなことなんて…っ!)


…考えれば考えるほどにあの夢が鮮明に蘇ってくる。


(ああ、もう…!)


忘れろ、あんな夢、恥ずかしいにも程がある。夢は願望の表れなんて俺は絶対に認めない!


気を紛らわすためにベッドに倒れ込む。

…こんな、エッチなことばっかり考えてるなんて俺、変態みたいだ…っ!


と、ふとソファーに目をやると、なぜかあまり見覚えのないカーディガン。

なんだろう、と起き上がって近くに寄ると、いつも真紀さんが身に付けているものであることに気付いた。


「忘れ物…かな」


彼女が忘れ物をするなんて珍しい。


(…真紀、さんが…いつも、着てる服、なんだよな……)


真紀さんの匂いとか、染み付いているわけで。

一応俺だって思春期真っ盛りな一男子であるのだから好きな人の匂いだとか…気になる、ものなのだ。


…周囲に誰もいないことを確認して、手にとった服に鼻をつける。

そのまま、すんっすんっと犬がするように匂いを嗅いだ。


(…っあ、真紀さん、の……)


近付いたときの、抱きしめられたときの、あの匂い。

ふわりとしていて、どことなく色っぽい香りが俺の性欲を掻き立てた。


(…そういえば、抱きしめられても、ない……)


ダメだ、そう考えると、余計に抱かれてるみたい、で…っ


(う、うわ、勃ってきた…っ)


イケナイことをしているって思うと胸騒ぎが止まらないのに興奮してしまって我慢ができない。

そのままソファーに座って服の上からゆっくりと勃起してしまった自身を撫でてみる。


「あ…ンッ」


びくびくびく。

…今まで自分で触ったって、こんなに身体が跳ねてぞくぞくすることなんてなかったのに。

今は、電気が走ったみたいに反応した。
気持ちいい…っもっと触りたい。


「あッ、ん…ふぁっ」


ベルトを急いで外すがズボンは脱がず、下着をずらして勃ち上がった陰茎だけを取り出す。

先っぽをぐにぐにといじくると、エッチな液がダラダラと溢れてきた。


「き、気持ちい…っあ、真紀さぁん…!」


もう一度カーディガンに鼻を寄せて匂いを嗅ぐ。
そうすると真紀さんにいじいじってされているような気分になってもっと気持ちよく感じる。


「あ、あ、もっと、もっとして、真紀さんッ!気持ちいいのッ、そこ…ぐちょぐちょにしてぇ…!!」


我慢できずにそう声に出すと、ドアの方から、ドサッという音が聞こえてきた。



続く

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ