イナズマ裏夢

□君の匂い。<前編>
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※風丸とは、初めての設定です。


(…あれ、あの服…)


練習を終えて部屋に戻ると、ベッドの上に、見覚えがあるようなないような…薄いオレンジ色の一着のジャージ。

自分のものではない。
では一体、誰のものだろうか。

近付いてみて、やっと持ち主を思い出した。
マネージャーの中で薄いオレンジ色のジャージを着ていて、図々しく人のベッドの上にそれを置いていくような人物。


(なんだ…神崎の服か。そういえば今日アイツ、掃除当番だったな)


それで掃除をしていたら暑くなってきたから一旦ジャージを脱いで、そのまま忘れて他の部屋へ…か。

相変わらず間抜けだ。

まあ確かに、今日は暑かった。それも仕方ないのかもしれない。


(…届けに行ってやるか)


貸しひとつだな、なんて考えながら、俺はその服を手にとる。
すると途端に、ふわりと彼女の匂いが鼻を掠めた。


(…え…あ…神崎の、匂い…っ)


不意に漂った柔らかい香りに、思わず動きが止まる。

汗臭いとかそんなことは一切ないのだが、なんというか、女らしい…ふわふわした匂いがした。

俺だって一応思春期真っ只中の中二男子だ、好きな人の匂いを嗅いでみたいと思う心だってある。

一瞬にして、その心に負けてしまった。

ジャージを鼻に近付けると、さっきまで曖昧だった彼女の匂いがはっきりとしたものになった。


(んっ…うわ、いい匂いっ…)


普段の大雑把で男らしい彼女からは考えられないくらい、『女性』的な匂い。


ぎゅっとジャージを抱きしめて、床に座り込む。

そうしていると、神崎に抱きしめられているようで。

そんなことを考えてしまう自分に羞恥と嫌悪を覚えるとほぼ同時に、急に変な気分になってくる。


(…っ、やばっ…シたいっ…)


…夕方とはいえ、まだ外は明るい。

そんなうちから自慰行為なんて、恥ずかしくてならなかった。

…それでもそれは、抗いようのない性的欲求。気分の問題だ。


(…さっき練習終わったばっかりだから、誰も来ない…だろうし、…ちょっとだけならっ……)


そんな誘惑に負けてしまい、俺は神崎のジャージをベッドに掛け、ゆっくりとズボンと下着をずり下ろした。



 
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