イナズマ裏夢

□嫉妬して、意地悪して
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※『自由奔放、神出鬼没』後

「んぁ…由岐、もう…保たない、出る、っぁあ…は、ぁっ」ドン、ギシギシ、ギーッ。枕元にドッタンバッタン響く情事の気配に深く布団を被り耐える。風介は明日も朝から練習だぞ分かってんのか、どうせ朝方に布団から出たくないだの朝食は食べなくていいから寝させろだの由岐を抱き竦めて譫言のようにそう我儘を漏らすのだからさっさと寝るかもう少し始める時間を早くしろ。いやチームメイトのいる部屋で事に及ぶな。

由岐も由岐だ、我儘の体たらくを甘やかすばかりで怒りも叱りもしない。「すっきりしたね、お疲れさま。おやすみ」その声に篭る感情はまた今日もひとつ甘くなる。大きく舌を打ったつもりだったが、それは外側のリップ音を遮断しないくせをして大きな顔をしやがる布地に吸い込まれる。胸にも腹にもむかむかと不快な空気が這った。この間にも風介は由岐に後処理を任せてすやすや眠りこけているのかと思うと更に腹が立つ。当然のようにそれをこなす由岐にも苛ついてまた布団の向こうの騒音に、ひとつ、舌打ちを籠らせた。




ガチャンガチャン。耳に慣れた開錠のリズムに、ソファに沈んでいた身体がその重さを思い出す。「あれ?晴矢、おかえり。風介は?」アイス買いに行ったと、それだけの返答を繰り出すのも怠く、苛立ちのまま知るかと小さく落とす。届いたのか届いていないのか、どちらにせよ俺から伝わるであろう感情は同じだ。由岐はそれ以上を尋ねてはこない。

まだ、昨日の深夜1時は尾を引いている。起床後案の定朝飯を抜く勢いで寝坊かました風介にも、そんな自業自得の怠慢極まりない無精者に着替えを用意し携行食を持たせ寝癖だらけの髪を整えながら歯を磨かせ、いってらっしゃいと俺たちを送り出した由岐にも。腹が立つ。苛々する。今更思い出したところでどうしようもないと分かっていながら舌を打つ自分にも。

眠ってしまおうと瞼を閉じれば、暗闇の中何度も繰り返される、2人の熱のやり取りが蘇る。吐き出す息に乗せれば嫌悪を纏うそれは唸りになり、今度こそ、その元凶に届いたらしい。「なに怒ってるの」疑問と、聞き分けのない子供を諭すような呆れ。ふざけるなよ、それを受けるのは俺じゃないはずだろ。ソファに近付く足音にむしゃくしゃするような苛立ちが募り、態とらしくそれを避けるように立ち上がって寝室に向かう。「晴矢」怒りを込めた早足も、由岐は意に介さない。掴まれた腕を、力任せに振り解く。

威嚇のように吐き出す嫌悪に、怯むような女じゃない。知っているはずだ、けれどそれにまた焦燥を駆り立てられる。腹の奥から湧き出て這い上がるそれを抑える術など、知りたくもなければもう知る必要もない。「うぜえな、」自分で思うよりも幾分か低い声が喉を震わせた。それを捨てた瞬間、今度は言葉にもならない不快感が熱を持って込み上げる。「なにそれ」耳に篭った熱のせいで聞こえない。いつの間にか顔も上げられなくなっていた。「ちゃんと聞くから。傷付いてあげないけど、吐き出してよ」今度こそ頭に落ち込んだその胸焼けがするような甘ったるい声に、吐き気すら覚えていた呼吸が止まる。こいついま、なんて。

「ば、かじゃねえの…」
「そうかな」
「ムカつくんだよ、その、余裕な態度」
「ごめん」
「そういうとこだよ、なんで…俺は、お前が、俺の…っああもうクソッ!!」
「…ん」
「なんなんだよ腹立つ、怒れよ、腹立つって思えよ、なんで俺ばっかこんな、」
「ごめん」
「ふざけんなよ、おれはっ」

風介を非難しながら、俺もあれほど我儘を言えたらと、思っていた。『良い子』でいた俺自身に優越感を感じていたのかもしれない。そんな自己満足の自意識に、いつか降ってくる褒美でも、待っていたのかも、しれない。むしゃくしゃする。むしゃくしゃした。くだらない遠周りをした自分にも。「晴矢、わがまま言わないんだもん。楽だなあとは思うけど、でも」腕を引かれるがまま、再びソファに身体を落とす。「わたし、甘やかすの、好きなんだよね」その声に篭る感情が、ひとつ、甘くなる。深く微笑む由岐の瞳に不貞腐れた俺が映った。

焦らすようにゆっくりと絡み付いてくる肢体を直視できずまた視線を落とす。それでも首に回った腕と押し付けられるふたつの膨らみと、肺にまで届くこの形容しがたい甘い体臭に、喉が灼けるほど彼女を感じた。「風介まだ帰ってこないんでしょ?」俺の背に回った腕がいやらしく熱を込めて服の奥をなぞってくる。この痴女。ついには服の裾からそれは侵入して、腰を撫で付け表層温を上げていく。その体温に、腹の奥から込み上げていた不快感を解されるようだった。

自分で座らせたくせに、由岐は狭いソファからずるずると俺を床に落とす。組み敷かれその柔い肉感的な身体を擦り付けられていては嫌でも意識せざるを得ない。下腹部に重い熱を感じて身動ぐ。そこからつま先まで、何度もぴりぴりと寒気にも似た痺れが落ちた。「泊まりに来てもう1週間だけど、隠れてしてたの?それとも」うるせえな、疲れとムカつきでそれどころじゃなかったっつの。『良い子』、いいや『大人』の俺は意地でもそれを演じきりたかった。そうでなくともお前と風介がする行為を1人虚しくするなんざプライドが許さねえわ。「ふうん、わたしとするの待ってたんだ」「な、」そうは言ってねえだろ!

腹を撫で、腰を撫で、熱を分けてくる。胸まで上ってきたその細っこい指は乳首を押し潰すように捏ね回す。人差し指の側面と親指の腹でぐにぐにと弄られるそこから、じわりと快感が滲んで背中が反る。徐々に落ちていくそれは下半身に回り、玉の少し上辺りに溜まってぐずぐずとした鈍い疼きに変わる。それを受け、快感を保ちたい腿に、つま先に力が入った。「むずむず、する?」由岐はにへら、と、だらしないくらい甘い顔で、筋の張った太腿をなぞってくる。俺の心意など意に介さぬ腰がその先を強請るように揺らめいた。くそ、最悪。

にやにやと、服の上から腰の骨を確かめるように撫で付けながら、その緩やかなカーブに従って、形が分かるくらい勃起しきったその中央へと由岐の左手が滑る。「ん、っ…んん」唇は引き結んでいるのにどこから漏れるのか、鼻にかかるような自分の猫撫で声が気持ち悪い。指先で器用にその中身を探り、裏スジを上下に刺激して、カウパーを垂らし始めるその先端をこりゅこりゅと弄ぶ。「晴矢すっごい蕩けた顔してる。1週間溜め込んだどろっどろの濃厚精子、射精したくてたまんないよね」こ、とばぜめ別に好きじゃねえって言ってんだろだからきゅんとするな俺のちんこ。

由岐は身体を起こし、さっきまで皺になるくらいいじくりまわしていた服を脱がしきってから、俺の股の間に顔を寄せる。「お…おい、今日まだ風呂入ってねえ、ぞ」下着に篭っていた臭いが押し出されてその不潔さを物語る。それなのにだ、由岐はこの体液の生々しい臭いを放つ蒸れた股間に愉しげに鼻を寄せる。頭どうかしてんじゃねえのか。だからむらむらするな俺のちんこ。

「んひぃっ!?う、裏スジやめろ、あ、はぁっ…!」暫く舐め回すように観察していたかと思えばいきなり裏スジに唾液を落とし直接舌を押し当ててくる。風呂入ってねえっつってんのにこの痴女。舌先でぐりぐりと弾くような刺激の後に、だんだんとザラついたその面積が広くなって、亀頭を咥えこまれた。「あ、ひっ、おまっ、え!それっ、そんっ…すっ、吸っ、たら、」掃除するみたいに唾液を塗りつけられ舌を這わされ、ちんこの根元がぴくぴくと快感にわななく。それに伴って膝とつま先にまたぴりっと静電気のような疼きが這って思わず力を込める。「でっ…出る、由岐っ…も、い、イク」ずるずるともう唾液だか先走りだかよく分からないそれを吸い取られるバキュームに腰が浮いて尻が締まる。のに、更に由岐が腰を抱き込んできて、「く、ふっ、くぅ、ぁっ〜〜あ」跳ね上がった心臓の音が耳に響く。その鼓動に合わせて、『1週間溜め込んだどろっどろの濃厚精子』は尿道を押し広げ内壁を擦りながら由岐の口の中に注がれた。

無意識に開いていた口から漏れ出る荒い息に気が付き、口内を潤すように唾液を作り飲み込む。腰が落ちて、暫く快感の余韻に上下していた肩が、漸く落ち着いた。ぢゅう、と、また下半身に淡い刺激。いつの間にか体液だらけだったちんこからべたべたとした不快感がなくなっている。尿道に残った精液をちょうど今絞り出されているところだと気付き、その最中に平常心を取り戻してしまった俺はなんとも居た堪れない気持ちでそれを受ける。「ん…はるやの、濃くてどろどろでツンとして、おいし」うるせえまたちんこ切なくなるからやめろ。
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