イナズマ裏夢
□君の匂い。<後編>
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「はっ…ぁ!?」
突然なくなった快感、そして訪れた物足りなさと焼け焦げそうなほどに体内に渦巻く熱。
風丸は自身に手をかけそうになるのを必死に抑えた。
さあ、本日二度目の焦らしプレイといこうではないか。
「気持ちよくないんなら、もうやめる。そうそう、円堂くんがさ、風丸くんに用事があるんだって。もうすぐ来ちゃうよ」
「なっ…!?」
円堂が来るというのは、出任せではない。元々、それを伝えるために来たのだ。
…すっかり忘れていたが。
「あ…ぁ、神崎……っ!」
「なに?」
「ぅ、あ…こんな、状態で…!」
知ったことか。大体、自分の気持ちに素直にならない自分が悪いのではないか。
…けれど彼の泣き顔を見ていると、僅かだがやはり罪悪感というものも生まれてくる。…本当に、ごく僅かだが。
仕方がないので、彼に一度だけ、チャンスを与えてやることにした。
「ねえ風丸くん」
「…っ?」
「触ってほしい?」
由岐がそう言うと、風丸はこれでもかというくらい目を見開いた。
そして、更に頬を紅潮させる。
「やっ…」
「私にどうして欲しいか言えたら、その通りにしてあげなくもないよ?」
そんな意地悪も付け足して、彼女はさらに口元を歪ませた。
屈辱と羞恥に耐える彼を見下ろしながら。
「あ…そんなっ」
言えるはずがない。本当はしてほしいけれど、僅かに本能に勝る理性がその言葉を発させない。
ぐるぐるぐる、と頭が混乱に陥る。
中々口を開かない風丸に、由岐は少々苛立ちを覚えた。
「…ねえ、早く答えてよ。時間ないよ?」
「っ、神崎……」
助け船は、出さない。
先程と同じように、彼の言葉をただひたすらに待つ。
その時だった。
コンコン、と控え目に部屋唯一のドアを叩く音が聞こえてきた。
「っ!?」
「風丸ー、いるかー?」
もう、聞き慣れた声。けれど今、風丸にとって一番聞きたくなかった声。
円堂だ。
けれど由岐は、至って冷静。
焦ることもなく、再び目の前で下半身を晒す少年に言葉を投げ掛けた。
「この状況、私は別になんてことないけど風丸くんは見られちゃったらヤバいよね」
「!!」
「…ねえ、素直にしてほしいって言えたら、フォローしてあげてもいいよ」
ほんの一瞬だが、彼の瞳が揺らいだのを、少女は見逃さない。
「どう?悪い提案じゃないと思うけど」
「っ……」
「どうする?」
口ごもる風丸に、彼女は追い討ちをかけた。ふるふると身体を震わせていた彼が、ゆっくりと声を発する。
「さ、わって…くれ……」
途端に由岐は、勝ち誇った笑みを浮かべた。